行列のできるリモコン②【毎週ショートショートnote】
二人の頭上には、満天の星空が広がっている。
「あっ、流れ星」
あなたの声のトーンが一段上がった。
「ほら見て、次から次へと流れていくよ」
私は思わず微笑む。
付き合って間もない頃、初めてのデートの帰り道で、偶然遭遇した流星群。
ぎこちなく繋いでいた手を、急にぶんぶん振ってはしゃぎ出したあの夜と、全く一緒だったから。
「願い事しなきゃ」
「何をお願いするの?」
「『これからも、きみとずっと一緒にいられますように』だね」
「あら。……じゃあ、私もそれで」
「おっ、嬉しいな」
二人で笑い合う。
……あなたが反対の手に持ったリモコンには、見て見ぬ振りをしながら。
そして、心の中では、こう願う。
『いつかまた、本物の夜空と流星群が見られますように』
五十年前、地上は人の住めない世界になった。
地下シェルターの味気ない天井に、星空を自由に映し出せるサービスは、大人気だ。短い利用時間は過ぎ、あなたは皺々の手で、背後の順番待ちの行列へとリモコンを渡しに行く。