生き写しバトル【毎週ショートショートnote】
「甘々田夏右衛門殿とお見受けする。我は苦汁澤春次郎。ここで会ったが百年目、お主に討たれた父・苦汁澤秋之助の仇を討つために参った」
秋之助の息子か。
本人が化けて出たかと見紛うほどそっくりだ。
「春次郎殿よ、並々ならぬ覚悟とお見受けする。無益な争いは好まぬと答えても、詮なきことであろうな」
秋之助とは、青年期より切磋琢磨し、剣の腕を競い合ってきた間柄。
仕えた主君のお家騒動に巻き込まれた末の、互いに望まぬ、しかし抗えぬ闘いだった。
「無論!」
猪突猛進なところも親譲りらしい。
今更、仇が何を弁解すれど、止まらぬか。
「しからば」
「覚悟!」
迷いなく振り下ろされた初太刀に、間断なき追撃。
強い踏み込みも鋭い狙いも、正に瓜二つ。捌くので手一杯だ。
だが、その動きは、何百と見てきた。
――父に生き写しの太刀筋が敗因になるとは、因果なものだな。
亡き盟友と寸分違わぬ袈裟斬りを、
避けずに、
正面で受ける。
ああ、これで、あの世であいつに顔向けができる。