デジタル混入島【毎週ショートショートnote】
「船は大破したが、なんとか命は助かったな」
「島に漂着したようですね」
「どうやら無人島か。当面の間はここで命を繋ぎながら、助けを呼ぶか脱出を試みなければ」
「まずは島を調べましょう。見るからに鬱蒼としたジャングルで、辟易しますけれど」
「……妙だな。植物の密度がこんなに高いのに、やたらと歩きやすくないか?」
「確かに……あ! 建物がありますよ!」
「家主はいないな。長いこと放置されているようだ。でも、電気が生きている。屋根でソーラー発電をしているのか」
「見てください、この機械。大規模なホログラム投影装置ですよ」
「立体映像でデジタルな密林を風景に混入させて、一見すると未開拓の無人島だと偽装していたのか」
「どこかの金持ちが道楽で隠れ住んでいたんですかね。でも、これだけの設備があれば当面困らないし、SOS発信もできますよ」
「しかし、誰か通りかかってくれるかどうか」
「時空探査船なんてまだ存在しない、百年前の世界ですもんね……」
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