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Photo by
mikiamind
無人島生活福袋【毎週ショートショートnote】
見知らぬ人に溢れた都会で生きている実感を喪っていた私は、一人きりでリフレッシュできる場を求め「無人島福袋」を購入した。
しかし袋を開けてみると、中にはサバイバルナイフが一本だけ。
狙っていた『プライベートリゾートコース』ではなく、最も過酷な『原野開拓コース』を引き当てた私は、ナイフ一本で原野の広がる無人島に渡らされた。
自らの身ひとつで住みかや食料を確保しなければならず、空腹に堪えかねて怪しげなキノコすらも食べながら、必死で生き延びた。
過酷な環境を開拓し、心身ともに鍛え上げられ人間らしさを取り戻した私が再び都会に帰ってくると、そこはもはや堪えがたい場所だった。
生気のない通行人、欲望にまみれた街。
誰も彼もうわべだけ取り繕って、人間の振りをしているだけ。
そう、ここは、この島国は、もはや人間などいない無人島なのだ。
ならば――この島もまた、開拓しなければ。
私は人ならざるモノで溢れる雑踏を前に、サバイバルナイフを振り上げた。
※ #文学フリマ東京39 にてホラーアンソロジー本に参加するため、当日までの2週間分のお題・裏お題はすべてホラーで行きます!