ツノがある東館【毎週ショートショートnote】
「ここがあの未解決事件『十一角館の殺人』の舞台になった東館です」
「不可解な謎が多すぎて迷宮入りになったという、あの事件か」
「ええ、そうです」
「十一角館というから十一角形なのかと思ったが、違うんだな」
「ええ、十一ツノ館ですからね」
「海側で見えにくい東側の屋根に、ツノみたいな突起が十一個あるのか。なんでこんなデザインに」
「この館を建てた主人が、事件の被害者で――」
「真相は闇の中、か」
「……」
「現場の海側の部屋は密室だったそうだが、トリックはまだ――」
「未解明です」
「当然だよな。死因は?」
「不明です」
「えっ、それも?」
「刺されたり叩かれたり切られたり毒物が検出されたりで」
「こわっ。じゃあ、大量の凶器が――」
「何も残っていません」
「どういうこと?」
「ですから、何もかも謎なのです。そもそも、殺人事件と言えるのかどうかさえも」
「えっ?」
「何しろ、被害者が――人と定義できるのかどうか。死体には、十一個ものツノが生えていて」
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