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だんだん高くなる星屑ドライブ・①【毎週ショートショートnote】

「少し遠回りしようよ」

帰り道、僕はそう提案して、尾根を巡るスカイラインに向かうことにした。
彼女は怪訝な顔をしたが、その表情はすぐにパッと晴れた。

「あっ、今、星が!」

そう。今夜は、流星群が楽しめる特別な時間。星屑ドライブだ。

「見て見て、ほら!」

道は少しうねりながら、だんだん高くなっていく。

「うん、綺麗だね」

開けた尾根の景色と澄んだ大気の上を、いくつも星が流れていくのが見える。
他に走っている車もいないので、スピードも自然とだんだん高まる。

「わあ、あそこも、向こうも!」

彼女のテンションが、一段と高くなる。
僕への好感度も、一段と高くなっているようだ。

「ねえ……もう少し、遠回りできる?」

そんなふうに見上げられたら、鼓動もぐっと高まる。

「そう、だね……」

呼吸が苦しい。期待が高まって、緊張してきたせいか。
いや、原因は――

「お客さん、まだこのまま進むんですかい?」

タクシーのメーターの表示額が、静かに上がりつづけていることだ。




※同お題ふたつめ

※同お題みっつめ


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