初めての鬼丼【毎週ショートショートnote】
湯呑のような細い筒型の丼。
中には、ぎゅうっと詰まったご飯と、尖った錐の形に盛られた肉。
この「初めての鬼丼」は、地域に伝わる昔話から来ているんです。
むかしむかし。
村に降りてきては、略奪をする鬼がいました。
とても大柄で強欲。村人たちはいつも怯えていました。
何とかしなくては。
村人たちは知恵を出し合いました。
そして、次に鬼が来襲したときのこと。
「実は、村の食糧や財産を貯めている場所があるんです」
そう言って鬼に示したのは、村外れの枯れ井戸。
強欲な鬼は、すぐさま井戸の中へ飛び込みました。しかし、大きな身体が内側でぎゅうっと詰まり、身動きがとれなくなったのです。
「今だ!」
村人たちは一斉に井戸の上から土をかけ、鬼を生き埋めにしました。
初めて鬼を退治した逸話として、語り継がれています。
えっ?
話はわかったが、なんでこんな変な形の器にしてまで、丼にしようとしたのかって?
ほら、「丼」という字は、「井」の中に角が一本出ているでしょう。