見出し画像

だんだん高くなる星屑ドライブ・③【毎週ショートショートnote】

「見て、綺麗ね。あの星もこの星も、すごい速さで流れていくわ」

彼女は眼を輝かせて、天体のショーを楽しんでいる。その姿は実に美しかったが、同時にとても儚く、痛々しくも映った。

「まるで、星屑の降る中をドライブしているみたい」
「そうですね」
「ずっとこの素敵な景色を眺めていたいわ」
「……そうですね」

本当に。
心からこの光景を楽しめたのなら、どれほどよかっただろうか。

流れているのは、周囲の星々ではない。
我々の足元の、この星だ。

我々がささやかに暮らしてきたこの小さくも美しい星は、今その命を終え、燃え尽きようとしている。目前に迫りくる巨大な遊星の重力に、もはや抗う術なく堕ちていくだけだ。

「みんな脱出したのに、あなたはなぜ残ったのですか」

私は思わず尋ねていた。

「国家と運命を共にするのが、私の務めですから」

そう答えた彼女の瞳は変わらず、いや、ひと際気高く、誇り高く、輝いていた。
私は思わず、この星の老いた女王に向かい、最敬礼をした。



※同お題ひとつめ

※同お題ふたつめ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?