台にアニバーサリー【毎週ショートショートnote】

「ようこそ！　本日は記念すべき二周年の日。いろいろ特典がありますよ！」
「……えっと、俺、死刑執行されに来たはずなんだけど」
「そう、この死刑台がオープンして丸二年なんですよ～」
「めでたくない」
「何とこの、豪華な金色の縄を巻くことができます！」
「嬉しくない」
「そして、もうひとつ！　質問です、いま一番行きたい場所って、どこですか？」
「いやこれから死刑……えっ、行けるの？」
「これまで訪れたことのある場所から選んでください」
「そうだな、箱根、北海道、台湾……うーん、でも、もう一度だけ故郷の町に帰れたらな……」
「ご回答ありがとうございます！　では、良い旅を！　オープン！」
「あっ、目の前が故郷の景色に――」
ガコン。

「あの死刑台には、乗った者が強く念じた風景を眼前に再現する技術を搭載しているんだ」
「いわゆる『走馬灯』の応用ですよね」
「そうだ。しかし、実用化するにはまだまだ研究が足りない。もっと死刑囚を実験台にしていかないと」