決闘年越しそば【毎週ショートショートnote】
新年の初詣を済ませてから、小腹が空いたので、そば屋に入った。さて、何を食べようか――
「お客さん、うちは今、年越しそばしか出してないんですけど、いいですかい? 味は保証しますんで」
え、あ、そうなの?
もう新年明けてるのに?
「ちょっとね、向かいのそば屋と、年越しそばで決闘中でして」
決闘?
「向こうがね、うちの年越しそばのほうがおたくより上だなんて抜かすもんだから、面白え、白黒はっきりつけてやろうじゃねえかって、そういうわけなんですわ」
それで、年を越しても勝負がついてないってことなのか。
どっちのそばが美味しいのか、味で勝負してるの?
「いやいや、年越しそばって、縁起物でしょ。だから、どっちのが縁起がいいかを競ってるってこってす」
え、それって、もしかして――
「もう十年、どっちの年越しそばを食べた客が長生きするのか、で勝負してるんでさあ」
それ、ちゃんと結果出るの?
いやはや、食べる側より作る側のほうが、よっぽど息が長いこった。