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非力面接をブンブンしてみる【毎週ショートショートnote】
「握手で強くブンブンされると、その日は一日じわっと手が痺れたままなんです」
「なるほど。他には?」
「筋肉痛になるほど筋肉がありません」
「ほほう。なかなかの非力ぶり……合格!」
『非力な人ほど強くなる』と、入門者を募集していた武術道場。
面接で非力エピソードを話したら、どうも合格したらしい。
「わが流派には、力はむしろ邪魔なのじゃ。相手の力を受け流し、神出鬼没に動き回るためにはな」
「なるほど! つまり、『蝶のように舞い、蜂のように刺す』ということですね!」
納得した私は、思わず首をブンブンと縦に振った。
「そんなカッコいい武術に、自分が向いているだなんて……虚弱体質でよかった!」
「あ、ちょっと違う。『蚊のように舞い、蚊のように刺す』のじゃ」
……えっ、蚊?
「非力でもなかなか叩き潰せず、しかし羽音や痒みで著しく不快にさせる。そんな夏の夜の蚊をモチーフにした『飛蚊拳』、さっそく稽古をつけてやろう!」
私は首をブンブンと横に振った。