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運試し擬人化【毎週ショートショートnote】

「君には選択肢がふたつ与えられている。つまり、その手で私を『引く』か、『引かない』かだ」

トレンチコートを着た男は――正確には≪男のように見えるそいつ≫は、勿体ぶった口調でそんな台詞を吐いた。

「決まってる。俺は『引く』ために来たんだ」
「……まったく。人間の行動は、実に酔狂だな。いいだろう――そして君には、再び選択肢が待っている。つまり、『当たり』か、『外れ』かだ。『六分の一』か『六分の五』のね。もっとも、今度は、君に結果は選べないわけだが」
「選んでみせるさ」
「……『弾』が飛び出してくることへの恐怖は?」
「怖くなんかないね。俺には家族が待っているんだ」
「家族のため、ね。泣かせる話だが、あいにく、私も慈善事業ではないのだよ」
「もういい。引くぞ」

私は、気持ちが鈍る前に、男にぐっと指をかけた――

「……はい、六等、ポケットティッシュでーす」

一等の温泉旅行は夢と消えた。
てか、無駄にハードボイルドだな、商店街の福引のくせに。


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