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沈む寺【毎週ショートショートnote】

他に人家のひとつも見当たらない山奥の寺に、日が沈んでいく。
うら寂しい景色は、沈んだ気分を晴らしてくれるようには思えない。

――勧められるままにこの『日没寺』まで来てはみたが、本当に私の悩みは解決するのか。

寺には薄気味悪いほどの静寂が流れていたが、よく眺めてみると、庭は手入れが行き届き、建物も特に朽ちておらず、綺麗なものだ。
そして本堂に足を踏み入れると――まるでたった今完成したかと見紛うような、錆びひとつない仏像が輝きを放っていた。

……そういうことか。
合点がいった。

「ここは――『時』から『日』が沈んで残された『寺』なのだ」

(先生、〆切を恐れても、いい作品はできませんよ。気分転換にぴったりの場所をご案内します)

私にここを勧めた編集者の言葉が脳裏に蘇る。

「つまりここは、『時』から解放された場所。そして――」

一人で言葉を発すると、どんどん頭が冴え渡ってくる。
そう――『言』うほどに、新たな『詩』のアイデアが浮かんでくる。



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