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惰性のエッヘン開放【毎週ショートショートnote】

「僕のお父さんは会社の社長でさ。お願いすれば、ゲームも漫画も何だって買ってもらえるんだ。将来は僕も社長になるって決まってるんだぞ。どうだ、羨ましいだろ」
いつものように君の自慢が始まった。誰かと話すときには、常にエッヘンと威張ってないといられないみたいだ。
「羨ましくなんかないよ」
「え?」
「君が本当は虚勢を張ってるって知ってるから」
「なんだと!」
「知ってるよ。頼めば買ってもらえるのに、我慢してること。会社の跡継ぎとして立派な人間になるために、遊ぶ時間を惜しんで勉強してること」
「な……」
「おべっかを使う人や嫉妬する人に疲れて、ついつい自分から人を遠ざけようと、惰性で自慢話ばかり広げちゃうんだよね?」
「それは……」
「私の前では、威張らなくっていいよ。私は、君のこと、わかってるからさ」
「……あ、ありが」
「あ、当たった? やっぱり! いやー私って人の心の内を読むのが得意でさ、この前も……」
今度は私が自慢話を開放する番だ。

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