メガネ初恋【毎週ショートショートnote】
初めて、恋に落ちた。
彼女は可憐で、優しそうで、見るからに理想的だった。周囲の評判もよく、誰もが彼女を褒め称えた。告白に踏み切る前から、「この人を好きになった自分は、視力は悪くとも見る目はあるよな」なんて自賛するほど、素敵な相手だと感じていた。
「好きです。付き合ってください!」
「……私も、きみのこと、実は前から気になってたんだ」
有頂天になりかけた僕に、彼女は奇妙な要望を出した。
「ねえ、その眼鏡、外してみてくれる?」
疑問符を浮かべつつ、僕は言う通りにする。
「……ふうん」
すうっと、彼女の声の温度が下がった。
「眼鏡の人って、外したら美形! とか、意外な素顔! とか、あるかと思ったのに」
いや、そりゃ、漫画なんかではよくある設定だけど。
「なんか、醒めちゃった。ごめんなさい」
――そんなことで?
彼女の態度に、僕の高揚感もまた、急速に醒めていった。
そう、今ならよくわかる。
僕らはお互い、相手を色眼鏡で見ていただけだったのだ、と。