会員制の粉雪【毎週ショートショートnote】
少女は毎晩、泣いていた。
「故郷の雪が見たい。さらさらと静かに降り積もる雪が」
難病に冒された身体を治療するため、生まれた町を離れ、家族や友達とも離れて、遥か遠い地の療養所までやってきた。
覚悟はしてきた。それでも、住み慣れた北国とはまるで異なる、病身に負担をかけないための温暖さゆえに、少女は塞ぎ込んでいた。
元気のない姿を案じた療養所の所長は、ある日、少女を呼び出した。
いぶかしみながら、カードキーで彼女専用のリハビリルームを開けると――
「わっ」
少女の目の前に、一面の銀世界が広がっていた。
「驚いたかい。室内で使える最新の人工造雪機さ。……誕生日、おめでとう」
そこは、たった一人のためのスノードーム。
彼女が生まれた冬の朝のように、さらさらと静かに粉雪が降り積もる。
「素敵。どうもありがとう!」
「喜んでくれたのなら嬉しいよ。しかもこの機械、とてもエコロジーな自己完結型なんだ。所内のゴミやし尿から水分を抽出して……」
「帰る!」