スライダーの偉大な滑り方【毎週ショートショートnote】

「王様、ここの隠し扉から、このスライダーで脱出します」
「ずいぶん長い間使われてないようだし、真っ暗だが、大丈夫なのか」
「もう追手が来ます。腹を決めてください。ここは王様の器の見せ所ですよ」

大臣の言葉に、王様は意を決して、緊急脱出路を滑り降りた。

「……大臣よ、酷い目に遭ったぞ」
「おお、王様。勇気と威厳に溢れた、スライダーの偉大な滑り方でございました」
「頭に蜘蛛の巣が付いたが……」
「おお、王様にくっ付けば、絹糸で編まれた織物のよう。スパイダーの偉大な巣張り方ですな」
「お主のほうは、ちゃっかり帽子のようなものを被りおって」
「サンバイザーの意外な使い方です。ともあれ、これでひとまずは安心……」

ダーン、ダーン！

「うわっ、銃撃！　……複数の方向からです！」

王妃に浮気がバレた王と大臣は慌てた。
修羅場の意外な抜け出し方で難を逃れたと思ったのもつかの間、二人は怒り心頭の王妃による、スナイパーをいっぱいな使い方の前にさらされた。