初めての鬼【毎週ショートショートnote】
ずっと追いかけられる側だった。
「いっしょにおにごっこしよっ」
「いいよー」
物心つく前から一緒に遊んでいた。
小学校で、それぞれに同性の友達ができた後も、お互い特別な存在だと感じていた。
でも、中学校に上がったある日のこと。
「なあ、俺たち、これからもずっと一緒だよな?」
ふと漏れ出たあいつの言葉は嬉しかったのに、あたしはつい、意地悪してしまった。
「さあ、どうかなあ」
それでも、あいつはあたしをずっと追いかけてきた。
高校も、大学も、どこにするんだと何度も尋ねてきて、あたしが散々煙に巻いてから教えたところについてきた。
あいつが話しかけてくる度、あたしは思わせぶりな態度と言葉でひらりと躱し、惑わせ、焦らした。
今思えば、確定している好意に甘えた、くだらない優越感だった。
「俺、やりたいことができてさ。海外へ行こうと思う」
キラキラした目であいつは言った。
今まではあたしに向けていた目で。
あたしが、初めて追いかける側になった瞬間だった。