チョロいの、くさび【毎週ショートショートnote】
「皆さん、ずいぶんチョロいのね! 今後は私に従ってくださいね」
『クイズ研究会はクイズが強い者が牛耳るべき』と、従来の体制に楔を打ち込んできた新入部員・時真栗乃。先輩部員たちはクイズ勝負で次々に敗北し、実権を握られてしまった。
「このままじゃ、時真のやりたい放題だ。しかし彼女の実力は本物。せめて彼女の『強さこそ全て』という考え方に楔を打ち込めないものか……」
「部長、僕に任せてくれませんか」
一人の部員が志願し、栗乃に一通の便箋を差し出した。
「私への挑戦状? 面白いじゃない、どれどれ……」
そこには、矢じりのような形がずらりと並んだ暗号文が。
「なるほど……これは、楔形文字ね。それさえわかれば、解読なんてチョロいわ。なになに……『どんな謎も解いてみせるあなたが好きです』……?」
途端に栗乃の顔が真っ赤になる。
「こ、こんなので絆されると思ったら、大間違いなんだからね!」
彼女の乙女心に楔を打ち込むのは、案外チョロかったようだ。