逢いたい菜【毎週ショートショートnote】
「うちの菜の花は『逢いたい菜』といって、愛情をもって育てることで、その愛情を捧げるに相応しい人を引き寄せる、不思議な力があるんです」
その生花店は、路地裏の奥とは思えないほど、黄金色に輝く菜の花で明るく輝いていた。
「ここに並ぶ菜の花からひとつ選んでください。お代は不要です」
「……いいんですか?」
「お金はお客様が『効果があった』と感じたらいただきます。騙されたと思って、試しに育ててみてください」
私は一番輝いて見えた『逢いたい菜』を持ち帰った。
その優美な美しさを保つのはなかなか骨が折れたが、やりがいもあった。綺麗な花を綺麗に咲かせ続けることで、心が潤い充たされる気がした。
そのうち私は、これほど綺麗にこの花を咲かせるまで育て上げた人物が気になってきた。きっと、手間ひまを惜しまず愛情を捧げる、素晴らしい人に違いない……
「……ええ、貴方の育てた菜の花を選んだ方から、貴方を紹介してくれと。……はい、報酬の振り込み先は――」