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waraineko
塩人(しおんちゅ)【毎週ショートショートnote】
青菜に塩、とばかりにあたしはヘコんでいた。
あまりにもしょっぱい幕切れだった。
彼が話しかけてきても、必要以上にツンツンと、塩対応をとってばかりいた。
もっと、しおらしい態度でいればよかったのに。
二人の関係を、少しずつ、手塩にかけて育てていくべきだったのに。
今ならわかる。ライバルのあの子に、塩を送ってばかりいたんだと。
恋愛って難しい。
どうやったら、潮目を読んだ駆け引きができるのかな。
どうやったら、いい塩梅に振る舞うことができるのかな。
潮が満ちるように涙が込み上げてきた。
あれこれ思い出したって、傷口に塩を塗るだけだと、わかってるけど。
彼との日々は、まだ、塩漬けにはできないよ。
結局、考えが甘かったんだろうな。
彼の優しさに甘えて、心地良い関係性に甘んじていただけ。
……ああ、しんどい。考えれば考えるほど、自分で心のスイートスポットを突いてしまう。
甘い未来を夢見ていた甘ちゃんなあたしでも、次々にあふれてくる涙は、塩辛かった。