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秋の空時計【毎週ショートショートnote】
「マスター、先日いただいた時計、変ですよ」
「変って、何がだい?」
「朝、マスターに会うまではなかなか時間が進まないのに、マスターと一緒にいる間は、動くのが速すぎるんです」
「なるほど。それはね、その時計が『秋の空時計』だからだよ」
「……? 私の語彙にはない言葉です」
「ふふ、怒ったり悩んだり、表情や感情がコロコロ変わるきみにぴったりな時計だろう」
「マスター、私のこと、からかってますでしょう」
「おっ、よくわかったね。さすが私の優秀なアンドロイドだ」
マスター、あれから私は学習しました。
「女心と秋の空」という諺を。
そして――誰かを想うあまり、常に一定に過ぎるはずの時間に一喜一憂する、女心というものを。
そして――その諺は元々、「男心と秋の空」だったことを。
マスターは、私に芽生えた感情のデータを用いて、最新型の開発にかかりきりだ。
私は今も「秋の空時計」を身につけている。
いつか再び、マスターの心が私に戻ってくる日を待ちながら。