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hananosu
肋骨貸す魔法【毎週ショートショートnote】
「我の虜となるがよい!『魅了の矢を放つ魔法』!」
魔女ミラから、無数の光の矢が放たれた。
この矢に心臓を貫かれると、ミラに魅了され、意のままに操られてしまう。さらに、攻撃魔法ではないため、汎用的な自衛手段の『防御障壁を作る魔法』では防げないのだ。
だが俺たちには秘策がある。
心臓目掛けて飛んできた矢は、俺の身体に届いた瞬間、ガチンと弾き返された。
「なっ……」
「驚いた?『肋骨貸す魔法』よ」
女神の加護を受けた女性神官の身体の一部であれば、魅了を防げるのではないか?
仮説は当たった。俺の身体に加わった、パーティーメンバーの修道女アクアの肋骨が、心臓を守ってくれたのだ。
「今よ、アルファード!」
「ああ、アクア!」
「くっ……!」
俺は一気に間合いを詰める。と、ミラの顔を覆い隠す不気味な長い前髪が、ふわりと翻った。
初めて間近で見た魔女の素顔は――
「美しい……」
「あ、アルファード?」
魅了の魔法などなくとも、俺は一目で「骨抜き」になった。