棒アイドル【毎週ショートショートnote】
アイドルの存在価値は風前の灯火であった。
古来、アイドルとは、庶民の憧れであり、雲の上の存在であり、だからこそ輝くものであった。しかし時代が移り、メディアの双方向性が進むにつれ、アイドルは「身近な存在」へと変化していく。
そして、流れは「会いに行けるアイドル」から大人数グループ化へ、しかもそんな集団が複数活動するという、ファン側が「推しを選べる」形へと進んでいった。
一方、技術の発展により、WEB上ではバーチャルアイドルが定着。誰もがアイドルになれる社会がやってきたのである。
それから、さらには十数年後。
供給過多の問題はさらに膨らみ、「犬も歩けばアイドルに当たる」と揶揄されるまでに至っていた。
『アイドルには棒ほどの価値しかない』
……そんな現状を変えよう、新しい価値観に塗り替えようと、ついに復権へ向けて一大プロジェクトが始まる。
金の延べ棒の量産。アイスの当たり棒の倍増。格闘技としての棒術の使い手の育成。棒棒鶏の普及……