超短編小説|昔の作文
ぼくが1才ときのお話です。
得体の知れない何者かがぼくをつけていました。それは触ろうとしても通りぬけてしまい、つかむことができませんでした。近所の公園に遊びへ歩いて向かうあいだも、砂遊びをしている最中も、それはつねにぼくの側にいました。
家に帰ろうと思ったとき、それが少し大きくなったことに気づきました。ぼくはだんだん怖くなってきました。ぼくは全速力で走りました。それでも、それはぼくをずっと追いかけていました。追い抜くでもなく、ぴたりと僕にくっついて、ずっとついて来るのです。
お兄ちゃんに相談すると、「お化けかもしれないな」と言っていました。お兄ちゃんによると、お化けはふつう真夜中に現れるのだそうです。暗闇が大好きなのです。
けれど、ぼくの知っているお化けは、真っ暗闇のなかには現れませんでした。夜になると、電気のついている部屋や月明かりの照らされた庭にだけ現れました。だから寝る時間になると、布団にもぐって隠れることにしました。
もちろん、今はその正体を知っています。それは僕の分身のようなもので、明るい場所が好きなことも、夕方になると縦に伸びることも知っています。でも当時はそれが怖かったのです。
だから、忘れないうちに書き残しておきたいと思います。
前回の小説
おすすめnote
いいなと思ったら応援しよう!
サポートして頂いたお金で、好きなコーヒー豆を買います。応援があれば、日々の創作のやる気が出ます。