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エッセイ|子供の自由なアイデア。

 子どもの頃、面白い消しゴムがあった。
それは匂いの付いた消しゴムで、いちごとか桃とか、フルーツはもちろんのこと、カレーの匂いがついた物もあった。

 その消しゴムに鼻を近づけると、とても美味しそうな香りがして、給食が待ち遠しくなる。あの消しゴム。

 小学生の頃、匂い付き消しゴムがクラスで流行ったとき、僕のまわりにも持っている人が数人いた。

 当時、たまらなく魅力的に思えたけれど、僕は買わなかった。理由は、好きな食べ物がうどんで、さすがにうどんの匂いの消しゴムは売っていなかったからだ。

 最近、そんな面白い消しゴムに再会した。
それは、僕が英語を教えている塾でのこと。僕は小学生に英語を教えている。

 ある日、いつものように英語レッスンをしていると、ある低学年の男の子が例の消しゴムを持っていた。

 どうやらチョコレートの匂いがするらしく、レッスンに疲れてくると、消しゴムに鼻に近づけて休憩している。

 「まだ、あったんだ」

 僕は、とても懐かしい気持ちになった。疲れを癒すために甘い物を食べると良いとは聞くけれど、甘い香りを嗅いで休憩するなんて、斬新なアイデアだと思った。


 さて、塾で子供たちに勉強を教えていると、とても面白い話を聞くことがある。特に、小学校低学年の純粋な男の子たちからだ。

 彼らは、外から砂を持ってきては大事そうに触っていたり、教室を走り回ったりしている。そこには、彼らなりの世界観があって、大人たちが忘れてしまった自由な発想がひそんでいる。

 もちろん、あまりにも自由気ままに過ごしていると、レッスンに支障をきたすので、さすがに注意をする。けれど、僕は彼らの自由な発想に尊敬の念を抱いている。

 それは、ある日、チョコレートの消しゴムの男の子が僕のところにやって来たときもそうだった。

  「せんせいは、どんな消しゴムが好き?」

 とつぜん、僕にそんな質問を投げかけてきた。

 僕はきっと、「どんな匂いのする消しゴムが好き?」と聞きたいんだな、と思った。小学生はよく必要な言葉を省くことがある。言葉を正確に伝える術を持っていないから、それは仕方のないことだ。

  「先生はうどんが好きだから、うどんの匂いかなぁ」

  「ぼくはね、世界中から感染症を消す、消しゴムかなぁ」

 「ん?」

 僕は、耳を疑った。想定していたものとは違う答えが返ってきて、戸惑った。感染症を消す? そんなの答えとしてアリなのか。

 初めから話を否定するのは良くないので、僕は彼の話に耳を傾けることにした。

  「それがあると、世界中の人が幸せになるよ。消しゴムがあれば、苦しんでいる人がいなくなって、みんな健康になるよ。マスクしなくていいし、笑顔も増えると思うんだ!!」

 子供の発想はどこまでも自由だった。

 けれど、僕たちは大人になるにつれて、まるで紙粘土が固まるみたいに、頭がかたくなっていく。

 「これって、こういうものだよな」という、大人たちによる物事の決めつけが思考停止を招く。

 だから、「消しゴム=文字を消すための道具」だと決めつけているうちは、僕たちの思考は停止したままだ。そんなことでは、奇抜で斬新なアイデアなんて浮かばない。

 子供の発想は、限りなく自由だった。
 まさに、アイデアの宝庫である。
 これからも、見習っていきたいと思った。

2022.10.29.

雨宮 大和あまみや やまとです。

今日は、久々にエッセイを投稿しました。
匂い付き消しゴムと聞いて、懐かしく感じた人も多いのではないでしょうか。ちなみに、うどんの匂いの消しゴムですが、2022年には存在しているようです。ちょっぴり、興味があります。

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雨宮 大和|エッセイ・短編小説
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