超短編小説|宝の地図
「25年前の宝の地図が見つかったぞ」
昨晩、父からそのことを聞かされて、僕は期待に胸を躍らせていた。なかなか眠りにつけなかった。遠足の前日の夜よりも、クリスマス前日の夜よりも、それはずっと興奮した。
そこには、どんなお宝が眠っているのだろう。きっと、地図を頼りに穴を掘ったら宝箱が出てきて、そこにはキラキラと輝く宝石とか金貨が入っているのだろう。僕の妄想はどんどん膨らんでいった。
結局、僕は一睡もしないもまま朝を迎えた。僕はスコップを持って、父は大きなシャベルを持って家を出た。父は地図をひと目見たとき、お宝がどこにあるかの見当がついたらしい。僕たちは車に乗って、目的地まで向かった。
昨日の夜に想像していた、大きな船で財宝を探し当てるみたいな大冒険はそこにはなかった。コンパスや望遠鏡やドクロの描かれた旗もそこにはなかった。あるのは、僕の小さなスコップと父の大きなシャベルだけだった。
「よし、着いたぞ」
父はそう言うと、僕たちは車を降りた。それから、地図にバツ印が付いている所まで歩いていった。父は「そうだ、ここだ」と言って、僕たちは立ち止まった。小さな公園の大きな木の下だった。
僕たちは穴を掘っていった。30分くらい経ったとき、茶色い箱が姿を現した。父は「あ、段ボールだ。なつかしい」と言って、満面の笑みを見せていた。
父は段ボールを開けると、そこには目を疑うような品々が入っていた。
それは、0点と書かれたテストの数々。その瞬間、父の顔から笑顔が消えた。父の背中は、小さく縮んで見えた。
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