極秘の儀式。
僕は子どものころ、儀式があった。横断歩道の白線を見つけると、それは決まって始まった。小さな足を大きく開き、大股歩きで、慎重に白線部分を踏んでいく。
白線は宙に浮いている木の板みたいに、踏み外すと地面に叩き落とされてしまうと思ったのだろうか。それとも、白線のみを歩かないと叱られると思ったのだろうか。とにかく真相は分からないけれど、当時の僕にとっては大切な儀式だった。
儀式が行われるのは、横断歩道の白線の上だけではなかった。点字ブロックを見つけたときにも、それは始まった。点字ブロックには2種類の模様があり、僕は同じ模様のブロックを進まなければならなかった。
他にも、進む道に様々な色のレンガやタイルが敷きつめられていれば、同じ色を踏まないといけなかった。その日の気分で好きな色を選んで、同じ色だけを進んでいく。時にはジャンプをして飛び移ることもした。外を歩く時の僕は、とても忙しかった。
儀式のことは誰にも言ってはならなかった。極秘の儀式であったし、口外してしまうと社会の秩序が保たれなくなる気がした。けれど、何の目的で行われる儀式なのかは、当時の僕ですら分からなかった。とにかく、踏み外すことが居心地の悪いものだということしか。
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noteに文章を書きながら、大人になった今も、何か儀式はないかと考えていた。あ、あった。
noteの毎日投稿だ。
これまで、幾度となく中断されてきたnoteの毎日投稿である。僕は毎日記事を完成させ、18時半に予約投稿をセットする。子どもの頃の儀式と同じで、罰則はないけれど、僕は記事を毎日投稿しないと居心地が悪くなる。
投稿は、今のところ順調にできている。これからも、この儀式は守っていきたいと心から思う。
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