好きな色は、何色ですか?
僕は、好きな色は何色かと訊かれたら、赤色と答えるようにしている。
スマホの色は赤色だし、お気に入りのボールペンもそうだし、今着ているTシャツも赤色だ。僕のまわりには、赤色のものが実に多い。
けれど、赤色だったら何でもいいわけではない。
例えば、信号機はどうだろう。青のときは渡っているのでほとんど見ていないが、赤のときはじっと見ていると思う。それでも、信号機の赤はあまり好きになれない。
じゃあ、りんごは? 赤いハチマキは? 神社の鳥居は? 郵便ポストは? 唐辛子は? もうやめよう。
僕が好きなのは、ワインレッドのような少し濃い赤色だ。赤ワインのような熟成された色が好みなのだと思う。
僕は幼稚園のころ、赤の絵の具しか使っていなかった。
だから、僕の絵はいつも真っ赤だった。右上に描かれた太陽をのぞけば、不自然な色彩を帯びていた。きっとパレットには赤色しか待機しておらず、赤色のチューブばかりがちぢんでいったのだろう。
なぜ赤色の絵しか描かなかったのか、理由は覚えていない。僕には世界が赤色に見えていたのか、それとも単に赤色が好きだったのか。考えれば考えるほど、謎は深まるばかりである。
幼稚園バスから降りると、僕は母に今日描いた絵を見せた。真っ赤な幼稚園が描かれていた。すると、僕たちのまわりにいた近所の友達やそのお母さんが「なんで赤色だけで描いたの?」と笑っている。
僕は赤色について考えていると、そんな遠い昔の記憶が鮮明に蘇ってくる。
2022.7.6.
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