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はじめて買ったブルーのCD。

 僕はSpotifyで音楽を聴いている。ちょうど今も、BGMとしてイヤホンから流れている音楽を聴きながら、この記事を書いている。振り返ってみると、音楽をまともに聴くようになったのは中学1年の頃だった。

 それ以前は、ドラえもんとかに出てくるアニメソングや音楽の時間に習った童謡や給食の時間に流れてくるクラシックぐらいしか聴いていなかったと思う。

 小学6年生のときに友達の家へ遊びに行った際、CDラジカセから音楽を流してもらったことがある。友達はSMAPの『世界に一つだけの花』をすごく絶賛していたけれど、小学生の頃の僕は音楽にまるで関心がなかった。

 中学に入ると、まわりの友達が音楽を聴いていることに気づいた。教室では、何の曲を聴いているかで盛り上がっていた。僕もみんなに合わせるように、CDを買うことに決めた。でも、何を買ったらいいか想像もつかない。

 学校の帰り道にあるCDショップへ寄ってみると、興味深いCDを見つけた。そのCDのジャケットに当時流行っていたドラマのタイトルが書かれていたのだ。僕は迷わずそれを買った。

 家に帰ってCDを再生してみると、それはサウンドトラックだった。BGMを聞くと、ドラマのシーンがありありと蘇ってきたが、みんなが聴いている音楽とは別物だった。

 けっきょく、父に聞いた。父は、「最近、コブクロが流行ってるよ」と教えてくれた。当時観ていた『ドリーム☆アゲイン』というドラマの主題歌をコブクロが担当していたことで、さらに親近感が湧いた。

 僕は友達にコブクロのCDを買うことを告げた。彼は、「コブクロいいよね。オレが聴いているのは全然メジャーじゃないんだけど、EXILEなんだ」と言った。ぼそっと。

 音楽って、そんな肩身の狭い思いをしながら聴かないといけないのか。僕は頭に隕石でも落ちたかのような、すさまじい衝撃を受けた。EXILEはその後、日本レコード大賞を取るまでに人気となっているから、今じゃ考えられない話だ。

 はじめて買ったCDは、コブクロの『蒼く優しく』というシングルだった。ブルーの背景に透明のカセットテープが置かれたジャケットは、深海にひそむ生き物のようで僕をぞくぞくさせた。

 CDは買った初日に、何度も何度も聴いた。おかげで一時停止を押しても、僕の耳のスピーカーは音楽を止めなかった。メロディーは頭の中でずっと鳴り響いていた。

 CDには、お目当ての『蒼く優しく』以外に、『君色』や『赤い糸』という曲も収録されていた。せっかく買ったのだし、もったいないから聴いた。何度も何度もリピートしていくうちに、他の曲も好きになった。CDのもつ魅力だと思う。

 それから理由は分からないけれど、翌日、僕は体調を壊して学校を休んだ。原因不明の発熱だった。僕は布団に入っていても、買ったCDを何度も何度も再生した。けっして体調は良くないのに、ズル休みを堪能している気がして、ぞくぞくした。

 今では音楽を買わなくても、ストリーミングで聴く時代になっている。おかげで世界中の音楽を無限に聴くことができる。それと引き換えに、自分で音楽を買う喜びは、もう味わえなくなったのかもしれない。

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雨宮 大和|エッセイ・短編小説
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