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ぼくと英単語の物語。

 中学生のころ、ハリーポッターが好きだった。学校から帰ってくると、ハリーポッターのDVDを観ながら夕食を食べるのが日課だった。部活がしんどくて、学校の勉強はあまりできなかったけれど、映画に出てくる英語だけは勉強していた。

 同じセリフを何度も繰り返して観たり、セリフをメモ用紙に書き写してみたり、お風呂にメモを持ち込み暗唱したりしていた。今思うと、中学生にしては少し風変わりな英単語の覚え方だったと思う。勉強というよりも遊びの一環で、その方が楽しかったし、覚えた単語は自然と忘れなかった。

 僕は塾で英語を教えていると、反復練習が大切だという話をよく耳にする。僕も生徒たちにはそんな説明をする。けれど、忘れにくい覚え方をした英単語は、何回も反復する必要はないと僕は思っている。

 映画で出合った英単語は、自分のなかでイメージが形成されていった。これは、最近よく耳にする「イメージで英単語を覚えよう。暗記から脱却しよう」みたいな話ではない。中学生の頃の僕は、英単語に出合うまでの物語があったのだと思う。

 今でも、その感覚は健在だ。英会話でこういう言い回しがあるんだ。英単語のこんな使い方があるんだ。映画館で洋画を観るとき、ついついそんなことばかりが気になってしまう。内容よりも英単語の方が面白い。

 最後に、僕がハリーポッターシリーズのなかで一番繰り返して観た、『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』から英単語の物語を一部紹介したいと思う。


care 「気にする」

 careは「気にする」を意味する英単語だが、僕はハーマイオニーの意外すぎる一面を連想してしまう。

 それは、ハリーポッターが生徒たちを集めて、闇の魔術から身を守るための秘密の練習を行う際の会話でのこと。

 ジニーが「もし秘密の練習がバレたら?」と心配していると、普段は真面目なハーマイオニーが「誰が気にする?」と言ったのだ。その後も、彼女は「校則を破るのはワウワクしない?」と発言している。

 だからcareという英単語を聞くと、かつて映画で何度も聞いたハーマイオニーの発言を思い出してしまう。

Who cares?
(誰が気にする?)

『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』より

get away 「離れる」

 ハリーポッターの名付け親であるシリウス・ブラックがハリーを助けに来たときのセリフ。get awayは、「離れる」や「立ち去る」を意味する熟語だが、映画でこの表現に出合った僕にとっては、シリウスの頼もしさを感じてしまう。

Get away from my godson.
(私の息子から離れろ。)

『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』より

alike 「似ている」

 ヴォルデモートがハリーポッターの体のなかに入りこんだ際に、ハリーは体を操られ、それを必死で抵抗する。側で観ていたダンブルドアが言ったセリフがある。

It isn't how you are alike, it's how you're not.
(奴といかに似てるかではない、いかに似てないかだ。)

『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』より

 まさに、ダンブルドアの名言だと思う。ここでの「似ている」というには、ハリーがヴォルデモートに似ているということ。ハリーはこの後、ヴォルデモートに対して、You'll nevr know love. (お前は、愛を知らない。)と発言している。

次に読むなら

僕は小川洋子のファンで、『小川洋子の作り方』という本を持っています。その本の中に、小説を読むことで言葉が届かない場所へ行っているという話がありました。ぜひ記事をご覧ください。

 今日は、「ぼくと英単語の物語」をお届けしました。ハリーポッターは、僕が英語を好きになったきっかけの物語だし、今でもたまに見ちゃうんですね。すごく中毒性があって、何度も見たシーンなのに没頭して最後まで観てしまったなんてこともあります。
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雨宮 大和|エッセイ・短編小説
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