海外移住を決めたときのわたしへ。
不定期で「あのときのわたしへ。」シリーズをやろうと思います。その名の通り、「あのときのわたしへ手紙を書く」感じで書いていきます。
「あのときこうだったなぁ」「あのときこうしとけば……」っていう思いは、誰しもが持っているでしょう。でもカッコ悪い経験って、わざわざ文章にして発信しようとは思わないんですよね。だってカッコ悪いもん。
でもあえて発信することで「現在あのときのわたしと同じ状況にいる人」のお役に立てるのでは?と思い、こんなシリーズをはじめることにしました。
今回のテーマは、「日本に馴染めず海外移住を決めたわたしに言いたいこと」です。ちょうどいま海外移住を考えている人に読んでいただけたらうれしいです。
有料化も考えたけど、多くの人に読んでもらいたいので無料です٩꒰。•◡•。꒱۶
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【日本を飛び出し、ドイツへの移住を決めた】
高校3年生の夏、自分の将来を考え始めたわたしは、ふと「海外ってなんかいいな」と思い始めた。
それまでの学校生活でずっと違和感を持ち続けていたわたしは、漠然と「自分には日本という国は合っていない」と思っていた。だから単純に、「ちがう国に行ったらなにか変わるんじゃないかな」と考えたんだ。
いま思えば、当時留学していたお兄ちゃんの影響を受けたのかもしれない。
わたしの第一志望の大学だった立教には、英語・フランス語・ドイツ語学科がある。
英語はいつでもどこでも自力で勉強できるし、フランスはなんだかオシャレで近寄りがたい雰囲気がする。ドイツは歴史も文化もおもしろいし、優れた技術があるし、街並みもなんかきれい。よし、ドイツにしよう。
わたしにとって「海外へ行きたい」というのは、その程度の軽い気持ちだった。そして、それがたまたまドイツだった。本当に、それだけだった。
大学入学後もヨーロッパへの憧れを漠然と持ち続け、「大学卒業後はヨーロッパに行きたいなぁ」とせっせとバイトして貯金した。
それでも「本当に大学卒業後海外に行くべきか?」と迷っていて、就職することも考えて少しずつ就活セミナーにも顔を出した。
でもみんな同じ髪型をして、同じスーツを着ているのが、とにかく気持ち悪かった。待遇や条件という具体的なことは触れずに心構えや理想を聞くばかりの説明会にうんざりして、就活が馬鹿らしくなった。
「海外に行きたい」という気持ちが具体的に膨らみ始めたのは、ここらへんからだと思う。
紆余曲折あったけど、大学3年生の夏から1年間のドイツ留学を経験した。ドイツでは、30歳になっても学生でいる人、高校卒業後はボランティアや留学をしてから大学へ入った人、就職する前に旅をしてやりたいことを探している人など、いろんな人と出会った。
ドイツの「自分の人生は自分で決める」という当たり前の姿勢にとても感動して、「就活なんかしない。日本では働かない」と決めた。
わたしは、なんとなく就職なんてしない。自分の意見を殺して集団に属すなんていやだ。理不尽には戦ってやる。長時間労働なんてふざけるな。わたしは「就職したら遊べなくなる」と愚痴ってるみんなとはちがい、自由に生きるんだ。いま思っても恥ずかしいけど、当時は本当にそう思ってた。
そして留学の帰国から1年経った大学卒業後の9月、宣言どおり、わたしはドイツへ戻った。
【本当にそれは、海外じゃないとダメなのか?】
交換留学が終わって日本に戻ったとき、わたしは「ドイツでならわたしらしく生きれる」と思っていた。ドイツならわたしは輝ける、日本はわたしがいる場所じゃないんだ、わたしが悪いんじゃなくて環境が悪かったんだ。そう思った。
でもドイツで失敗ばかりして、日本で可能性を模索しようとしなかった自分が悪かったことに気づいてしまった。
たとえば日本でも、おもしろい企業はたくさんある。労働環境に気を配っているホワイトな企業だってある。聞いたこともないベンチャー企業が、新たな挑戦をしていたりする。
わたしはそれを知らずに、「日本じゃダメだ」って思ってしまった。自分が知ってる世界だけを「日本」と決め付けて、「ダメ」というレッテルを貼ってしまった。
たとえ日本の企業に馴染めなかったとしても、新卒フリーランスや起業という選択肢があったはずなんだ。
それなのに、「大学卒業→就職」を前提としていたわたしは、「就職したくないなら海外へ行くしかない」と思ってしまった。
日本でも「快適だ」と思う環境に身を置くことは可能だったはずだ。でもわたしは「日本じゃダメだ」思考に侵されていたから、逆に「ドイツならなんでもできる」という安易な結論を導いてしまった。
ドイツに来たことを後悔してるってわけじゃない。わたしがドイツを好きなのは事実だし、どのみち渡独はしたと思う。でも、もうちょっと広い視野を持った上で海外移住を検討すべきだったとも思うんだ。
いろんな選択肢を検討した上での海外移住じゃなくて、「日本はダメ」「ドイツは最高」っていう極論で日本を飛び出すのは、あんまり良い結果にならない。
というのも、当然のことながらドイツは完璧な国ではないし、なかなか理想どおりの人生なんて送れないものだから。
せっかく海外移住するのなら、もっとポジティブな気持ちから行動したほうが良かった。「日本でできないこと」ばかりに目を向けるんじゃなくて、「ドイツでできること」を真剣に考えればよかった。そうすれば、またなにかちがったかもしれない。
【海外移住を検討しているあなたへ】
日本を飛び出し海外に住むことは、きっとあなたにとって価値のある経験になる。海外に出ること自体は素敵だし、日本人はもっともっと海外に飛び出すべきだと思う。
でも、もしかしたら、あなたは少し勘違いしているかもしれない。あのときのわたしと同じように。
勘違いっていうとちょっと偉そうだね。「海外に期待しすぎている」って書いたほうが正確かな。
もしあなたが、「日本がイヤだから」という理由で日本を出るのなら、少し待ってほしい。
海外を理想化しすぎてない?海外なら無条件でめくるめく理想の日々を送れると思ってない?
海外だって、住んでしまえばただの「居住地」に過ぎない。ぜんぜん特別じゃない。結局は、どの国にいようとあなたの心次第。アマゾンの奥地や紛争地帯に行かない限り、ふつーの海外生活が待ってるだけだよ。
わたしみたいに、日本を飛び出して海外で大怪我してのたうちまわる人間だっている。もちろん海外ですごく楽しい生活をしている人もいるけど、それは「海外」がすごいんじゃなくて、「その人」が輝いてるから楽しく見えるだけなんだ。
そこをまちがってほしくないな、と思う。
海外移住はやめた方がいい!って言うつもりは全然ない。海外へ行くために立派な理由も必要ない。
ただ、「日本では無理」と決め付けて、「海外ならできる」って思い込んで移住するのは、その後現実を知ってがっかりする可能性が高い。わたしみたいに。(わたしの場合、がっかりしたのはドイツへではなく自分へだったけど)
大切なのは、どの国に住むかよりもなにをするか。海外に視野が広がると、逆に足元の可能性や選択肢を見逃しちゃったりするから、それで後悔はしてほしくない。
日本にだって、自分が知らない世界はいっぱいある。「日本だからできないこと」なんて、本当はほとんどない。それはただ「日本じゃ実現しづらいこと」ってだけで、覚悟さえあればだいたいのことはできる。
その覚悟がないのは自分が弱いからであって、日本という国が悪いわけでもなければ、移住先(わたしからすればドイツ)の国が自分のために都合よく存在しているわけでもない。
せっかく海外へ飛び出すんだから、もっと楽しい理由で、前向きに行った方が絶対楽しくなる。
海外移住を決めたときのわたしへは、「せっかくならもっと楽しい気持ちでドイツへ行け」という言葉を贈りたいと思います。
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