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「つながらない権利」を守るドイツの本気
最近お気に入りのバナナケーキ。うちのオーブンは暴走気味で、「180度で40分」のところ、「150度で20分」で焦げました。なぜだ!!
みなさん、「つながらない権利」ってご存知ですか? 最近では特に、ヨーロッパで注目されている概念です。
仕事が終わって家に帰っても、仕事に関するメールがきたら、ついついチェックしちゃいません? 職場から電話がきたら、無視するのはやっぱりむずかしくないですか?
だからこそ注目されるのが、「つながらない権利」です。
勤務時間外、休暇中は、「つながらなくてOK」と、労働者の権利を保障します。見なくていい、対応しなくていいってことですね。
インターネット上でいつでもだれとでも仕事ができるようになったからこそ、こういう「仕事から完全に距離をおく時間」を確保できるっていうのは、大事なことだと思います。
この記事を書いたのは、とある自動返信がきっかけです。
ドイツにはかかりつけ医(ホームドクター)制度があって、わたしもかかりつけ医がいます。で、その先生は超効率主義なので、採血結果はメールで教えてくれて、問題があったときだけ病院に呼ばれます。処方箋も受付に預けておいてくれるので、ちょっと行ってぱっともらうだけで終わり。めっちゃ楽です。
で、薬のことで、かかりつけ医にメールをした日のこと。
「ぼくは○日まで休暇中です。休暇中に受信したメールはすべて自動的に消えます。お急ぎの方は受付へメールしてください」
という自動返信が返ってきました。
いままでは、「休暇中なので返事が遅れます。お急ぎの方は受付へメールしてください」だったのに、「自動的に消える」設定になったようです。
昨日かかりつけ医のところへ行ったとき、「休暇中のメールが消えるようになったんですねー」と言ったところ、「つながらない権利を守るために、院長にみんなでかけあったんだよ」と笑ってました。
医療に携わる人は、休暇中でもやっぱりいろいろと気になるんだそうです。特に、電話がきたら出ないわけにはいかないですよね。だからこそ、「休暇中のメールは自動的に消える(土日や勤務時間外の問い合わせはは次の勤務日にチェックすればOK)」、「勤務時間外の電話禁止」になったんだそうです。
もちろん、患者のデータなどはちゃんと共有してあります。ドイツでは救急と診療所が大きくちがうので、診療所はそれでも支障はでません。緊急の場合は病院に行けばいいし。どこの医療機関でもこうできるかっていうと無理だとは思うけど。
ちなみに、保険会社のメールもちょっと変わっていました。
以前までは、「休暇中です。お急ぎの方はこちらの同僚のアドレスへお願いします」だったのが、「休暇中です。同僚へ自動転送した後、受信したメールは自動的に消えます」になっていました。
「どんだけみんな休暇中なんだよw」というツッコミはさておき、権利を守る本気度を感じました。
ぶっちゃけ、「つながらない権利」とか言っても、気になってメールやスマホをチェックしちゃうじゃないですか。休暇終わったらまた仕事へ戻るわけだし。でもそんなこと言ってたら、心休まる時間なんてないですよね。
ちなみにドイツでは、有給休暇中に体調を崩したら、それを申請して有給休暇の日数から引いてもらえます。病欠は休暇じゃないから、とのこと。「休む」ことへの本気度がすごいです。
日本だったら「つながらない権利」とか言いつつ、
・担当者不在だとブチ切れるお客様
・連絡が取れないと鬼電してくる上司
・怒られるのをわかってるので常にメール・スマホチェックする部下
・休暇中でもいつでも仕事ができる状態であるべきという社会
のおかげで、実現はしないでしょうねー。
たまたま2回連続で「つながらない権利」を守ろうとしているところを目の当たりにしただけで、ドイツだから全部そうってわけでもないんだろうけど。それでも「休暇中のメールは全部消えますからね!送ってもムダですよ!!」ってすごいよね! 日本じゃなかなかできない決断ですよ。
ドイツではそれに文句を言っても「いや、休暇中だし。クレームつけられても困るんで。じゃ」って相手にされませんからね、うん。
権利のために戦う人たちがいて、その権利を行使することではじめて「権利がある」状態になります。
法律で保障されてるだけで、だれもその権利を守ろう、行使しようとしなければ、意味がありません。ドイツでの「権利」への意識の高さを垣間見た瞬間でした。