『戦闘破壊学園ダンゲロス』は伏線回収が美しいなんでもありの異能力バトル漫画!!
※作品紹介の性質上、多少のネタバレを含みます。
■この先、作品概要!!
作品名:戦闘破壊学園ダンゲロス
作者:原作・架神恭介、漫画・横田卓馬
掲載誌:ヤングマガジン
発表期間:2012年から2015年
巻数:全8巻
個人的な評価:92点
■あらすじ
■下品なのに緻密なストーリーは面白過ぎる!!
異能力バトルものといえばなんでもありなその性質上、話の風呂敷を広げすぎて回収できなくなり、なんだか有耶無耶のうちに最終回を迎える印象がありますが、『戦闘破壊学園ダンゲロス』(以下、『ダンゲロス』)は、最初はとある学園というミクロなスケールから物語が始動し、果ては国家、世界とスケールが大きくなっていくにも関わらず、伏線を回収し、物語の始まりと結末だけを聞くと「なにがどうしてそんなことになる」と疑問を抱かずにはいられない二点が綺麗な軌跡となって着地します。
「あらすじ」で示されているように、『ダンゲロス』では魔人(=異能力者)が幅を利かせている学校、私立希望崎学園において対立している2つのグループ、「生徒会」と「番長グループ」の抗争を描いた物語です。これだけ聞くとよくある異能力ものといった印象を受けますが、その「異能力」が文字通り、「なんでもあり」すぎて面白いです。
・異能力がなんでもありすぎる
まず、主人公の「両性院男女」からして、異能力バトルの主人公らしなからぬ能力を備えています。
「チンパイ」は対象者の性別を逆転させる能力です。異能力バトル漫画でありながら、打撃や属性攻撃といった戦闘向きの能力ではなく、主人公でありながら「性別を逆転させる」という使い道がよくわからないものをあてがわれています。
ちなみに「オッパイパーイ」と発言することで性別逆転に要する時間を短縮させることができます。
しかし、1巻冒頭で魔人に覚醒する「友釣香魚」の能力「災玉」を知ることで合点がいきます。
「災玉」は半径およそ20m圏内の男を友釣の知るあらゆる性病に罹患させ、尋常ならざる量の精液を吐き散らしながら金玉が爆裂し、絶命させる能力です。
能力のわけわからなさが凄いですが、ここに、男女の能力によって対象者を香魚の能力の射程圏内に入れることも、またその逆も能動的に切り替えられることが可能になることがわかります。
このように、『ダンゲロス』では、様々な魔人の能力が連関し合い、その時々について生徒会、番長グループ各々の司令塔が作戦を考え出し、なんでもありだったはずの能力に合理性が与えられることが多々あります。また、男女のように、一見使い物にならなそうな能力が、後に伏線であったと判明するケースもあり、能力のなんでもありさがうまく、一本道のシナリオの結末へと落とし込まれていきます。
ほかにも『ダンゲロス』にはイカれた魔人が多く、例えば「「“処女”を奪う」と心に決めた瞬間に発動し、因果を超えて対象の処女を奪う」能力「メギド」や、「振られたと判断した男性に対し、視聴覚を通じて自殺を強要するサブリミナル・メッセージが対象の感覚するすべての物体を通して発せられるようになる能力」である「自殺ブリミナル」、「人の理性のタガを緩める能力」により「どうしても押したくてたまらない自爆スイッチ」を大量生産する魔人など、中学生の頃に書き溜めたA4のノートから引っ張ってきて作ったようなキャラクターから「その発想はなかった」と思わず膝を打つようなものまで様々な魔人が登場します。
・ミクロなスケールとマクロなスケールの話がうまく折り合っている
『HUNTER×HUNTER』を読んだことがある人はわかるかもしれませんが、まず組織や、もっと言えばその世界の精神、神のような存在の意志が働いており、それに伴ってトップダウン的にミクロな世界で戦闘が繰り広げられているという世界観設定を、『ダンゲロス』においても踏襲しています。ここでいう「ミクロ」「マクロ」の基準は相対的ですが、『ダンゲロス』においては希望崎学園内で巻き起こる抗争が「ミクロなスケール」の物語であり、生徒会、番長グループに次ぐ第三勢力である「転校生」の暗躍が「マクロなスケール」の物語を汲んでいるといえます。
この「ミクロなスケールとマクロなスケールの物語の連関」という作業は至難の業であり、「なんか最後に恐怖の大魔王が復活して全部破壊して終わり!」みたいな雑な結末でつじつま合わせをしようとする作品はよくありますが、『ダンゲロス』はその物語の結末もさることながら、最後の、さらに最後の「単行本限定書き下ろしマンガ」で、壮大な伏線回収が行われます。
・頭脳戦のクオリティが高い
頭脳戦をそもそも放棄してしまっている作品というのはよくあります。「え?いやこの時点でこのキャラの能力使って倒せばよくね?」とか「いやこいつだけで勝てるし他のキャラいらんやろ」みたいな疑問が次から次へと湧いて出てくるような作品ですが、『ダンゲロス』はその時点で、当該の情報を有しているキャラクターを明確にし、また、その時点で考えうる最適な行動(=その情報を有しているキャラクターの実益を最大化する行動)はなにかといった思考のプロセスを、主に男女と生徒会会長「ド正義卓也」を通して追うことができます。これにより、なんでもありな異能力バトル漫画においてもなお、各キャラクターの行動や、その結末に納得しながら読むことができます。
例えば生徒会会長のド正義卓也は能力名「超高潔速攻裁判」という、「現地の法に照らし合わせて有罪だと判断される対象者をド正義が睨みつけることでその場で死刑の執行をすることができる」超強力な能力を有していますが、それでいてもパワーバランスの崩壊は起こらず、疑問を感じることなく読み進めることができます。
■まとめ
『戦闘破壊学園ダンゲロス』は、異能力バトル漫画でありながら、精巧に練られたシナリオとキャラクターデザインによってなんでもありでありながら納得のいく合理的で面白い漫画でした。というか僕は作者の「架神恭介」が好きで「完全教祖マニュアル」が特にお気に入りです。みんなも架神恭介が書いた本を読もう。
あと『ダンゲロス』で一番好きなキャラは「あげは」ちゃんと「一刀両断」ちゃんです。なぜならメンヘラ女と性知識が無さすぎる女がこの世で一番可愛いから。好きな能力はムーの「木曜スペシャル」と夢見崎アルパの「キミとボクの二人の世界」です。
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