吉田 秋生は90才までマンガを描けるか? 最後の長編『詩歌川百景 第1・2巻』(2024.02.13)
~ストーリーを説明する記述があります。ご注意ください
■吉田 秋生の『詩歌川百景 第1・2巻』を読んだ。全く前知識が無かったので第1話で「河鹿沢」とか「和樹」が出てきたので、あっそうか『海街diary』のラストにつながる物語なんだと…、「通り雨のあとに」で すず は「和樹」と「妙」にバトンを渡していた。吉田 秋生は、現在の「月刊フラワーズ」でのペースでいけばあと25年、90才まで描き続ける決心をしたのだろうか? もちろん百景が100話でなくてもいいんだけど。
でも登場人物の多さといい、それぞれに訳のある人間関係といい(複雑すぎてわからん)、長編としての出だしと思われる。
■第1巻で伏線を二つも(もっとあるかもしれない)張っている。一つは河鹿大橋から淵に飛び込んだときの妙の涙は何だったのか?淵の水流にまかれたのか、自分で沈んでいったのか?引き戻したのは和樹だった。二つ目は、リンダ(林田)のセリフ「うっかり毒リンゴ食らうなよ 白雪姫」の意味は?
ちなみに、林田は和樹の同級生で、進学率が県下でもトップクラスの高校の成績一番か二番でありながら大学に行かず、町役場の観光課に勤務している。高校を受験する妹があり、背景に色々ありそうだ。そして妙は、リンダと同じ高校で秀才でありながら大学進学をしないことを選んだらしい。温泉旅館の経営と湯治客のエピソードをからめて河鹿温泉の四季は移っていく。
■第2巻はもう……リンダ-!……そうなのか―‼そうだったのか‼と、これは妙にも和樹にも、どうにもならない。不幸の予感しかしない。
■吉田 秋生は、一貫して親から切り捨てられた少年・少女を描いてきた。 初期の頃から、時代とともに思い出すと……
「鉄雄⇒アッシュ リンクス⇒スーパーサイア人ごくう⇒アラレちゃん⇒ひばりちゃん」…わかんないよなー!勝手に浮かんできた連想だから。…でも…「大友 克洋⇒吉田 秋生⇒鳥山 明⇒江口 寿史」と繋げていくと何となく時代の生み出した才能達という感じがしてくる。
アメリカのベトナム戦争での敗退、アメリカンニューシネマで繰り返し描かれる家族・家庭の崩壊、吉田 秋生は自分の表現の原点を「真夜中のカウボーイ」だとした。自由で豊かなアメリカンドリームは幻想だった、というところから自分たちの表現をスタートさせなければならなかった。私は、『櫻の園』の乾きっぷりと制服の重ったさが好きだ。岡崎 京子の『リバーズ・エッジ』へつながっていく。
■静かな山間の温泉地だったとしても、人間が住んでいくのだ。人の心に静かな温泉地なんてない。
生きていくということは、時代と人間の激流のなかにぼろ船で乗りだしていくようなものだ。
河鹿沢の4人の同級生は、それぞれに生長することができるだろうか?
※続く……かもしれない! 第3巻は図書館予約中で、4巻はまだ出ていません。