あまくち物語⑥
ゲーム音楽をエレクトーンで弾いている
超ニッチなYouTuber
【あまくち / amakuchi Electone】
この物語は、彼女が誕生し
成長していく軌跡を描いた
フィクションとノンフィクションが
混ざった物語である。
【2019年11月】
あまくちはコンスタントに動画投稿を続けていた。
自由時間のほとんどを音楽に費やしている。
耳コピで楽譜を起こして
エレクトーンで音やリズムを作り
同時に練習もする。
そして、撮影と編集。
1曲完成するまでに
どれくらいの時間がかかるのだろう。
もちろん、曲にもよるが
軽く24時間は超えている。
MG
「YouTubeでライブ配信ができるみたいよ。
やってみようよ。」
MGは、あまくちに無責任に言った。
あまくち
「やってみなくて大丈夫。」
あまくちは即答した。
MG
「絶対面白いから1回やってみようよ!」
あまくち
「絶対にやってみなくて大丈夫!」
またも、あまくちは即答した。
あまくちは、動画投稿者としては珍しく
目立つことや、人前に立つことが苦手だ。
影でサポートをすることの方が得意で好き。
もちろん、ゲーム音楽もエレクトーンも大好き。
だから、顔出しはしないで
動画投稿を続けている。
MGは、あまくちが弾くエレクトーン生演奏
の凄さを知っている。
これをファンの人達と共有できたら
絶対に面白いし、デメリットもない。
メリットしかない。
そう思ったMGは、時間をかけて説得した。
MG
「1回やってみて、ダメだったら
もう止めても良いから。
アーカイブも残さなくて良いから。
とにかく1回やってみよう。
やってみてから
続けるか続けないかを決めよう。」
あまくち
「……。顔を見せなくて、何も喋らなくて良かったら
やってみようかなぁ。」
あまくちが、ついに折れた。
【山が動いた】とはこのことだ。
【山が動いた】
分からない人は、是非ググって欲しい。
知らないことを知るってことは
知的好奇心が満たされて
脳科学的にも良いことしかない。
生配信をすることが決まって、問題が1つ起きた。
あまくちが一言も喋らないとなれば
代わりに誰かがMCをしなければいけない。
MCにも名前が必要だ。
本名でやるわけにもいかないし
名前を付けずにやるわけにもいかない。
MG
「じゃあ、俺がMCするよ。
あまくちのマネージャーっていう設定でいくから
名前はマネージャーにする。」
MG(マネージャー)が誕生した瞬間だった。
初めての生配信はスマホ1台で行った。
エレクトーンの生音や、あまくちさんが弾いている
姿をそのまま配信する。
エレクトーンとミキサーとPCを繋いで
音を配信しているわけではなく
エレクトーン本体から出ている音や
打鍵音、足でベースを踏む音なども
そのまま配信しているから
臨場感は伝わった。
だけど、PCを使った配信ではないので
ネット回線が不安定になり
途切れ途切れになって、快適とは程遠い
生配信となった。
音質も酷いし、映像の質も悪い。
それでも、そんな不便さを楽しむかのように
ファンの人達は盛り上がった。
楽しくて熱いチャットが続いた。
あまくちと一緒の時間を過ごすことができて
本当に楽しそうだった。
そんな生配信を何度か続けていくと
あまりの環境の悪さから
離れていく視聴者も、もちろんいた。
だけど、熱心なファンの人達は
あきらめず、粘り強く、我慢強く
配信を楽しんでくれた。
いつしか、彼ら、彼女らは
【あまくちガチ勢】
と呼ばれるようになった。
【あまくちガチ勢】には感謝しかない。
彼ら、彼女らがいなければ
生配信は絶対に続いていない。
最後に一つだけ言いたいことがある。
配信環境は最悪だったが
あまくちの生演奏は最高だ。
これは、あまくち贔屓のMGの気持ち。
ちなみに、ファンの人達や
あまくちガチ勢の力を借りながら
あまくち生配信が
高音質、高品質になっていくのは
もう少し先のお話。
あまくち物語⑦に続く
作 あまくちのマネージャー(MG)