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食歩記【人は舌のみで味わうにあらず】ー『クロワッサン』、パンの本質と共に
『クロワッサン』パンの本質と共に
― 横浜・ ジャン・フランソワ
まただ。
また座れない。
テーブルはいくつも空いているのに、近くまで行くとハンカチや日傘がそれとなく置いてあって、席が取られているのだ。
前回も前々回もそうだった。
こうしてパンを載せたトレイを持ったまま、恨めしく席が空くのを待っていたのだ。
常連さん達は慣れたもので、パンを選ぶ前に席をキープする。
この店では皆そうしているのだ。今日は午後二時過ぎだから、さほど混んでないだろう。
そう思って、席より先にパンを選びに行ってしまった自分が愚かだったのだ。
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こんな想いまでしてこの店に通うのは、ひとえにこの店のクロワッサンのせいである。
ここのクロワッサンを食べてからというもの、他の店のものが何とも物足りなく感じられて、食べられなくなってしまった。
初めてこの店のクロワッサンを食べた時の驚きは今でも忘れられない。
クロワッサンだけではなく、パンという食べ物自体の概念が変わる体験だった。
僕はパンという食べ物をずいぶん長い間、誤解してきたと認めざるを得なかった。
パンの実力、底力を舐めていた。
そう言わざるを得なかったのだ。
※ ※ ※
奥のOL風の女性に動きがあった。
食べ終えて明らかに帰り支度を始めている。
それを横目で捉えながら、さり気なく席のそばへと移動を開始する。
読みは当たった。
離席した女性に軽く会釈して着席した。
今日のチョイスはクロワッサン2個とBLTサンドイッチにサラダとアイスティーである。
ランチセットは好きなパン2個を選ぶのだが、クロワッサンが2個どうしても食べたくて、しかしそれでは栄養が偏るのでBLTをお供にした次第である。
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