海士町観光協会 メンバー紹介 vol.1 / 高山 航樹
2001年生まれ。愛知県名古屋市出身。高校卒業後、一年間の浪人期間を経て早稲田大学文学部に進学。4年生を休学して、2024年5月より大人の島留学制度を利用し海士町へ。
生い立ち・経歴
~サッカーと同じ情熱を注げるモノに出会いたい~
自分は小学校から高校まで10年以上サッカーをやっていました。
もちろん小学生の頃はプロサッカー選手になることが夢でしたが、中学生になって‟現実”というものを何となく知り、早々に諦めてしまいました(笑)
ただ、サッカーを仕事にしたいという気持ちは変わりなく、その後は指導者の道を目標にしていました。
高校3年生で引退してサッカー漬けの日々からいざ解放されると、何か今までと違うことにチャレンジしてみたいなと思うようになりました。それまではずっとサッカーを拠り所に生きてきたので、それを手放すことに不安も感じましたが、サッカーと同じくらい情熱を注げるモノに出会いたい、という希望を持って大学に進学しました。
なぜ海士町へ?
~長く住んで初めて分かることがある~
大学に入ってからはいわゆる「地方創生」に興味を持ち、それに関連する講義を受講していました。その講義に海士町出身の方がゲストとして講演をしに来てくださり、そこで初めて海士町について知りました。当時は「面白い地域があるなー」と思った程度で、まさか実際に半年以上も海士町に住むことになるとは夢にも思っていませんでした!
実際に海士町に住んでみたいと思ったきっかけは、大学のワークショップに参加したことです。そのワークショップでは、数日間地域に滞在した後、その地域が抱える問題を解決するアイデアを提案する、というものでした。
密度の濃い有意義なワークショップでしたが一番の感想は、
「少し住んだだけでは何も分からない!」
というものでした(笑)
たった数日間の滞在だけでは観光客に毛が生えた程度で、その地域の魅力は発見できてもその地域に固有の課題を見つけるのは難しく、長く住んでみて初めて分かることがきっとあるに違いない!と感じました。
そこからより長期で地域に滞在できるプログラムがないかと探していると、海士町に「大人の島留学」という制度があるのを知り、参画を即決しました。
どうして観光協会へ?
~海士町の観光をもっと知りたい~
来島当初は、TADAYOIという港付近のグランピング施設で勤務してました。客室の清掃や食事の仕込みといった基本的な宿泊業務から、カヤックやSUP等のアクティビティのレクチャーといった島ならでは業務まで、幅広く担当させていただきました。すぐ目の前が海なので、青々とした海を横目に仕事ができる日々が、本当に幸せだったなと今でも感じています。
ただ、そのような刺激的な日々を過ごす中で、海士町ひいては離島の観光が持つ魅力や課題をより俯瞰的に学びたいと、次第に思うようになりました。そして、より接客機会の多い海士町観光協会で勤務することを決めました。
また、観光協会に入ったもう一つのきっかけとして、海中展望船あまんぼうのガイドをやってみたかったというのもありました。
海中展望船あまんぼうは、観光名所の三郎岩をはじめとする、海士町周辺の海上・海中の見どころを1時間近くかけて観覧する半潜水型の展望船です。
元々船に乗るのが好きだった自分にとっては、仕事として船に乗れることに衝撃を受けました!
仕事のやりがい
~絶対的な正解がないからこそ身に付いた力~
実際に窓口で接客をしていると、あまり計画を練らずに海士町に来られるお客様がかなり多いな、という印象を受けます。
なので、「海士町に来たんだけど何したらいい?」という質問をよく受けるのですが、正直な話、その質問をされると毎回悩みます、、
というのも、人によってふさわしい案内は異なるからです。
隠岐にまつわる歴史に触れたいという方には、隠岐神社という海士町を代表する神社やその関連施設がオススメだったり、離島ならではの景色が見たいという方には、明屋海岸という島内随一の景勝地がピッタリだったりと、その人が海士町でどんな体験をしたいのかによって案内すべき場所も変わります。
なので、窓口に来られた方が何を求めているのかを把握することがとても重要ですし、それに適した提案をして実際に体験していただいて、良い反応が返ってきた時に一番やりがいを感じます。
また、海中展望船あまんぼうにも、お子様連れのご家族から学生の方、ご年配の方まで様々な方が乗船し、その人数も毎回異なります。
なので、お客様の顔ぶれによって適したガイドの内容変わりますし、実際に話している時のお客様のリアクションを見てガイドの方向性を変える、ということも中にはありました。
下船される際に「分かりやすいガイドで楽しかったです」という言葉をいただいた時は、とても達成感がありました。
このように、「とりあえずこれ!」という絶対的な正解がないからこそ、自分でお客様のニーズを掴み、それに沿ったサービスを臨機応変に提供する力が、観光協会の仕事を通して身に付いたと感じています。
今後の目標・挑戦してみたいこと
~限られた時間でできることを~
自分はまだ大学生ということもあって、2024年の12月に離島する予定です。なので観光案内はもちろんのこと、レンタカーやレンタサイクルの利用実績の集計を通して来年度以降に向けた提案をするなど、限られた時間の中で最大限できることをしたいと思っています。
最後に
~海士町であえて観光に携わる意味~
海士町は、行政や教育においては全国的な注目を度々集める一方で、観光面では先進的な取り組みがあまり見られません。それどころか、良くも悪くも海士町はまだ観光地化されていないとすら個人的には感じています。
観光客の多い日曜日に飲食店や商店がお休みだったり、インバウンド向けのサービスがあまり充実していなかったりと、海士町での滞在満足度を上げる余地はまだまだたくさんあると感じています。
ただ、そんな海士町だからこその良さもあると自分は思っています。
例えば、観光客と島民の距離感。
海士町ほど観光客と島民の隔たりが小さい場所は、あまりないと思います。
飲食店で観光客と島民が意気投合したり、観光客が離島する時に島民が港でお見送りしたりする様子は、他の地域ではなかなか見られない光景ではないでしょうか。
実際に観光したのがきっかけで海士町への移住を決めたという話もよく聞きますし、観光客の方にも島での暮らしを直に感じられるのは、海士町ならではの魅力だと確信しています。
なので、島民の方とのより良い関係を作ることが、海士町で観光に携わる上で重要になってきますし、実際に観光協会では島内向けのイベントにも取り組んでいます。
最初は「これも観光協会がやるのか…!」という驚きもありましたが、多くの島民の方の協力の下でイベントを進めていくうちに、海士町であえて観光に携わる意味はここにあるな、と感じるようになりました。
今ある島の町並みや島民の生活を守りつつ、観光地として魅力を高めていくというのはそう簡単ではありませんが、そのような難題にも真っ直ぐ向き合えるのは、海士町観光協会の良さだと思っています。そんな観光協会で働くのも残りわずかですが、悔いのないように過ごしたいです!