【早稲田大学教育学部】合格戦略と学科選びのポイント
1. 入試戦略における教育学部の重要性
1-1. 「従来型」と「共通テスト併用型」
2021年度の共通テスト導入に伴い、早稲田大学では政治経済学部・国際教養学部・スポーツ科学部で共通テストと個別試験を組み合わせた「共通テスト併用型」の入試を採用しました。2025年度からは社会科学部・人間科学部も「共通テスト併用型」に移行し、文系10学部のうち、個別試験のみの「従来型」が5学部、共通テスト併用型が5学部という状況になっています。
私立文系専願の早稲田志望者は主に「従来型」の学部を受験し、一方、最上位の国立志望者などは負担の少ない「共通テスト併用型」を選ぶ傾向にあります。共通テスト併用型を採用する学部は増加していますが、依然として早稲田大学の受験者の主流は「従来型」です。
1-2. 教育学部が入試戦略上重要な2つの理由
理由1:従来型の学部で最も受験者レベルが低い
早稲田大学の学部の中でも、教育学部は比較的合格しやすい学部として知られています。以前は、所沢キャンパスにあるスポーツ科学部や人間科学部が最も合格しやすいとされていましたが、これらの学部が共通テスト併用型に移行したことで、状況が変わりました。例えば、スポーツ科学部の共通テストボーダーは78%前後と比較的低いですが、人間科学部のボーダーは85%を超えており(数学選抜方式を除く)、合格のハードルが大きく上がっています。
早稲田大学が公表している「学部間併願データ」から、教育学部の難易度が他の学部に比べて相対的に低いことが確認できます。以下のデータは、早稲田大学で最も難易度の高い政治経済学部と他学部の併願者数の割合をもとに、各学部の難易度をランキング化したものです。
「各学部の志願者に占める政治経済学部の志願者の割合」を比較することで、どの学部の難易度が相対的に高いかがわかります。
例えば、政治経済学部と商学部(数学型)の併願者は646名で、政治経済学部の志願者の24.1%が商学部(数学型)も併願しています。一方、商学部の志願者の23.5%が政治経済学部も併願しているため、商学部は政治経済学部と併願されやすく、難易度が高いといえます。
一方、教育学部(A・B方式)の場合、政治経済学部を併願している志願者の割合は1.5%と最も低く、教育学部の志願者約66人に1人しか政治経済学部を併願していません。このデータから、教育学部の受験者のレベルは他の学部に比べて相対的に低いと推測できます。
理由2:「穴場学科」が存在する
教育学部は、従来型の入試方式を採用している学部の中で、出願時に学科・専攻・専修の選択が必要な唯一の学部です。学科や専攻の併願ができないため、受験生は出願時に1つの学科・専攻・専修を選択する必要があります。文系は9つの学科・専攻・専修に分かれているため、受験生が各学科に分散し、合格最低点や倍率もそれぞれ異なります。その結果、合格最低点が低い穴場となる学科や専攻が生じることがあります。特に「生涯教育学専修」や「初等教育学専攻」が穴場になる傾向が見られます。
2. どの学科・専攻・専修に出願すべきか
先に述べたように、教育学部では出願時に学科・専攻・専修を選択する必要があります。そのため、適切な戦略を取ることで合格の可能性を高めることが可能です。教育学部(文系)には、教育学科、社会科、英語英文学科、複合文化学科、国語国文学科の5学科がありますが、それぞれ配点が異なるため、自分の学力や得意科目に合わせた選択が重要です。
教育学科と社会科は、3科目の配点がすべて同じ「均等配点学科」です。一方、英語英文学科、複合文化学科、国語国文学科は、英語または国語の配点が高く設定されている「傾斜配点学科」に分類されます。傾斜配点学科の場合、英語または国語の配点が1.5倍になります(厳密には、配点ではなく調整後の得点が1.5倍されます)。
以下に、2014年度以降の教育学部(文系)の各学科・専攻・専修の合格最低点を掲載しています。これらの合格最低点を比較することで、データから合格しやすい学科や専攻を見極めることが可能です。合格最低点が低い学科や専攻を選ぶことで、相対的に合格の可能性を高めることができます。
2-1. 均等配点学科の穴場
均等配点学科で合格最低点が最も低い傾向にあったのは「初等教育学専攻」、次点で「生涯教育学専修」でした。その他、「公共市民学専修」や「教育学専修」も1回ずつワーストとなっています。
「初等教育学専攻」と「生涯教育学専修」のどちらがその年の穴場となるかは、受験結果が出揃うまで分かりません。ただし、出願が開始する1月から早稲田大学が発表する志願者速報により、志願者数を確認することで、その年の穴場学科をある程度推定することが可能です。出願前には必ず志願者速報を確認し、戦略的に学科選択を行うことをおすすめします。
2-2. 均等配点学科の難関
均等配点学科で合格最低点が最も高い傾向にあったのは「地理歴史専修」、次点で「教育心理学専修」でした。その他、「教育学専修」が1回、「公共市民学専修」が4回トップとなっていますが、「公共市民学専修」は2018年度に「社会科専修」から改称されています。「社会科専修」の時代には教育学部の中でも人気が高く、合格最低点も高い傾向にありましたが、改称後は一度も合格最低点がトップになった年度はありません。
2-3. 英語英文学科・複合文化学科
合格最低点は「複合文化学科」>「英語英文学科」
「英語英文学科」と「複合文化学科」は、英語の得点が1.5倍である点は共通していますが、合格最低点と倍率は異なります。複合文化学科の方が合格最低点が高く、英語英文学科の方が低い傾向にあります。年度によっては、合格最低点に10点近い差が生じる場合もあり、どちらの学科を選択するかは重要な戦略となります。合格可能性を優先する場合は、「英語英文学科」を選択するのが定石です。
英語英文学科・複合文化学科に出願する学力目安
どちらも人気の学科で、出願を検討する受験生は多く、高い英語力が前提となります。具体的な学力目安としては、「教育学部の英語で70-75%以上」「共通テスト(リーディング)で60分以内に90点以上」を安定して取れることが求められます。英語がその水準に達していない場合は、「初等教育学科」や「生涯教育学専修」といった穴場の学科に出願することで、合格可能性を高めることを推奨します。
2-4. 国語国文学科
合格最低点は「穴場学科」>「国語国文学科」の傾向
穴場学科とされる「初等教育学専攻」や「生涯教育学専修」は均等配点、「国語国文学科」は国語の得点が1.5倍となる傾斜配点のため、配点構成が異なりますが、平均の合格最低点は国語国文学科の方が低い傾向にあります。そのため、以下の条件を満たす場合、穴場学科ではなく国語国文学科を受験することで有利になる可能性があります。
国語国文学科に出願する学力目安
国語国文学科も人気学科であり、多くの受験生が出願を検討します。この学科を受験するには、早稲田の受験生の中で上位レベルの国語力が必要となります。具体的な学力目安としては、「教育学部の英語で75-80%以上」「共通テスト160点以上」を安定して取れることが求められます。
特に国語は、3科目の中でも試験本番での得点が予測しにくい科目であり、普段の過去問演習との得点差が生じやすい傾向にあります。もし国語が得意でない場合や、国語国文学科への志望度がそれほど高くない場合は、合格可能性を高めるために、穴場である「初等教育学専攻」や「生涯教育学専修」を受験することを推奨します。
おわりに
早稲田大学教育学部は、従来型の入試方式を採用し、複数の学科・専攻・専修に分かれていることから、早稲田の入試戦略において最も重要な学部です。学科ごとの合格最低点や傾斜配点制度を理解し、自分の強みを活かせる出願先を選択することが、合格の鍵となります。共通テスト併用型に移行した他の学部と比較して、依然として「従来型」で合格しやすい教育学部は、特に私立文系専願の受験生にとって戦略的な選択肢となるでしょう。
教育学部の各学科には、それぞれ特有の特徴や難易度が存在しますが、今回ご紹介したデータや傾向を参考に、自分に最も合った出願先を見つけてください。基本的には、合格可能性を少しでも高めるために、穴場学科への出願を推奨しますが、早稲田大学が発表する志願者速報なども活用し、常に最新の情報をもとにした柔軟な戦略を立てることが重要です。皆さんが自分に最適な選択をし、志望する学部に合格できることを願っています。
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