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〇〇とICTの活用~見えてきたもの~

(1)教師の実践力とICTの活用

 少し前の話にはなりますが、国立教育政策研究所(国研)は、令和3年度の教育研究公開シンポジウムを開催し、報告書にまとめました。GIGAスクール構想が全国の学校現場に浸透する中、高度情報技術が学校にもたらすインパクトをテーマに、様々な研究報告を行いました。

 その中で、愛媛大学大学院教授の露口健司氏は、学級によってICT活用にばらつきがみられる現状を踏まえ、横浜市の小中学校を対象にICT活用を促進するポイントを探った調査結果を報告しました。

「授業場面と校務場面において、30歳代から40歳代の教員の活用度が高かったです。若手が積極的に使用するというよりも、授業スタイルが確立しつつある十年目以降の教員が授業や校務においてICTを利活用しているという状況かと解釈できました。」

国立教育政策研究所(2022). 高度情報技術が教育にもたらすインパクト: 教育実践・教育研究・教育行政の観点から

と述べており、教員のICT活用能力は教員が経験と共に培ってきた実践力に大きな関連があることを示唆しました。そして、東北大学大学院教授の堀田龍也氏は、調査結果について、

「授業するという行為が持つマネジメント、子供とのコミュニケーションの話とか、そういう基本的なスキルがある程度身について自動的に対応できるようになった人が授業を改善しようと思ったときにこのICTを生かすことができるのかなと思います。」

国立教育政策研究所(2022). 高度情報技術が教育にもたらすインパクト: 教育実践・教育研究・教育行政の観点から

と述べています。「ICTを授業改善などに生かすためには、教員自身の実践力が必要」といえるでしょう。

 1回目のnoteの「教師の学び」でも少し触れましたが、私は改めて「教師自身が学び続け、日々自問自答し、教育観を常にアップデートし続けることが大切である」と実感しました。
 

(2)リーダーのリーダーシップとICTの活用

 さらに、これも少し前の話ですが、白水始(国立教育政策研究所初等中等教育研究部総括研究官)は、令和2年度教育改革国際シンポジウムにて、

「『リーダーが形式平等にとらわれず、できるところからやろうとすることで、格差は少しでも是正されていく可能性がある』ということ、そして『リーダーがICT導入に積極的で、情報教育の指導主事や学校指導員支援員、いろいろなところにキーパーソン、社会実装の際の核人材というのが教育委員会等に存在するとICTも導入しやすくなってくる』ということもわかりました。』

国立教育政策研究所(2021). ICT を活用した公正で質の高い教育の実現(フェイズ2シンポジウム報告書)

と述ています。トップのリーダーシップの有無が学校間や自治体間のICT格差に直結している状況が浮かび上がってきているといえるでしょう。これは、1年と3カ月前のデータですが、今読者の皆さんの学校ではどうなっていますか?

 この調査報告を学級単位で考えてみます。担任する教員が「従来の伝統的な授業」や「学級のみんなが同じ内容を同じ方法で学ぶべき」という意識にこだわる傾向が強いと、ICT活用が促進されない。一方で、担任が新しい学びの在り方(主体的・対話的で深い学びによる授業改善、個別最適な学びと協働的な学び等)に積極的な場合には、子どものICT活用が進む。このようになるでしょうか。

 VUCA(Volatility(変動性)、 Uncertainty(不確実性)、 Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字で、先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態のこと)の時代では、「子どもを変える」のではなく、「教師が変わる」ことが必要不可欠とも言えるでしょう。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。御意見・御感想等、御待ちしております。

【引用・参考文献】
国立教育政策研究所(2021). ICT を活用した公正で質の高い教育の実現(フェイズ2シンポジウム報告書)
https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/r02/r030216-01_honbun.pdf(2023.02.19最終確認)
国立教育政策研究所(2022). 高度情報技術が教育にもたらすインパクト: 教育実践・教育研究・教育行政の観点から
https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/r03/r041109-01_honbun.pdf(2023.02.19最終確認)

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