ハナちゃんはロボットになりたい
「私の将来の夢はロボットになることです。
なんで、ロボットになりたいかというと、 私は勉強もできないし、運動も苦手です。
お母さんにいつもがっかりされます。
ロボットになったら、電卓をつかったように早い暗算ができて、正確な計算ができるようになります。
あと、ワガママな性格をなおしたいからです。
そして感情というものがロボットにないから、憧れます。
嫌いな食べ物を食べても
味覚がなくなればへっちゃら
辛いことがあっても、痛みを感じるようなことがあっても、ロボットになったらへっちゃらです。
私はできの悪い人間で親に言われてきたことをうまくできません。
「もっと勉強しなさい」
「こんなテレビみちゃいけない」
「こんなことで泣いていたらダメ」
そう言われますが、うまくできません。
勉強するよりテレビみたいし、辛いことがあったらすぐ泣きます。
だから、私はロボットになって
母親にいうことに従える、誰も傷つけないロボットになりたいです。
5年3組 石井 ハナ」
パチパチと拍手がなった。
「おもしろーい!いいね」「ロボットって最強だよな」
とお笑い芸人になりたいと作文で書いた宮本くんとYouTuberになりたい秋山くんが明るく言った。
ハナちゃんは表情を変えずに席に座った。
ハナちゃんの作文が1番私は人間らしいって思った。
周りはお医者さんになりたいとか
建築家になりたいとか言ってたけど
「人の役に立つ仕事がしたい」「昔その職業の方に優しくされた」「親がその仕事」
どこかで聞いたセリフばかりだった。
ハナちゃんはロボットになるために努力しているのかもしれない。
左腕には無数の切り傷があるし
それは傷みに耐える練習なのか
髪の毛は男の子みたいに短いスポーツ刈りにして、洋服はいつもグレーのパーカーを着ている。
その性別不明な姿も人間らしくなく、ロボットっぽいと思った。
これからハナちゃんは人間から離れて
「完璧なロボット」になっていくのかもしれない。