一人の夜耽け

　曲ができない。

　側から見たら、今の自分はぷっつりと糸の切れた人形が無理矢理踊っているようなものだと思う。あまがさゆうなんて名前と共に新しい人格を自分の中に作り出し、あたかも分離した自分の生活風景をツイッターに呟いてきているが、曲が上がらない今となってはただの挨拶をするだけのブリキ人形に過ぎない。

　何故、曲も上げずにこんな文章をnoteなんぞにつらつらと上げ始めたのかと言えば、曲は上げられないものの、何かを生み出して公開し、それを人に見てもらいたいという感情は未だ健在であるからだ。

　全くもって面倒な欲求不満だと思う。

　スポーツジムにでも通って汗を流すか、サウナと水風呂を繰り返して体の毒素を吐き出せば済む。そんなアクティブな欲求であればまだ解決のしようもあるというのに。できない、できないと心を蝕みながら創作と推敲を繰り返し、出来上がったー！と喜ぶも次は再生してもらえるのかどうかでドキドキしなければならない。全くもって面倒だ。

　悔しいことにそれでもやめられない。
　書くのも楽しい、曲を作るのも楽しい。撮り溜めた素材から動画を作るのも楽しい。
　苦しさがこれまた楽しくてたまらない。

　こんなしょうもない文句を垂れた後に自己紹介をするのも可笑しいので、簡単に言うと私はあまがさゆうと申します。
　自分の琴線に触れる好きな曲を作って、それをみんなに聴いてもらうことが楽しくて活動しています。
　こうして一人でDAWの前でシンセを弄りながらどんな曲を作ろうかと一つ一つ自分の感覚に近い音色やプリセットを探し、フレーズをぐるんぐるん360度変えながら曲作りをしています。

　そういえば、自己目標で10曲までは一人で何がなんでも作るという目標を積んでいたのですが、この度「傘の惑星」でそれが叶ったことを報告します。

　嬉しい、パチパチパチ。

　あれ、でもあの曲８曲目って書いていなかった？と言われてしまったらそれまでなのですが、youtuberのみに上げた「You & i」が８曲目で、傘の惑星が９曲目。あと１曲はこの活動を始める際に作ったもので、それを含めると計１０曲になります。

　たった一人で曲を作る。
　実のところそういった作業をこれまでしたことがなく、バンドという形式で私が作るものには必ずアレンジをしてくれる仲間がいました。とても素敵なアレンジで埋め尽くしてくれるので、最高、もう言うことないやとデモが想像を超えた形に広がっていく光景を楽しく眺め、スタジオで鳴らして幸せを貪っていました。

　ただ、そういう活動をしていく中で、果たして自分は作ったものに責任をちゃんと持てているのか非常に不安になり、同時に昨今のこんな状況で部屋の片隅で一人楽器を鳴らすことしかできなくなった時に、一つ課題を持って臨んだのが上記の「10曲」ルールでした。

　案外この10曲ルールのゴールにたどり着けたことが、一つ区切りになってしまっている感はあるのかもしれないとも思うわけです。純度の高い自分の好みと向き合いながら呑む酒の旨いこと旨いこと。燃え尽き症候群と言われればそれまでなわけだけれど。

　責任を持てたかというと正直まだ分かりません。

　分からないけれど、この長い長いトンネルのような曲のスクラップ&ビルド作業ができる耐久性を持てたということは、少なくとも「メンバーが良くしてくれる」と気楽にワンコーラスのデモを持ち寄っていた頃よりは成長したのかもしれないですね。

　あれ、おかしいな、五里霧中の曲作りの気分転換にエッセイ風の日記でも始めようと思っていたはずなのに、やけにしんみりした内容になってしまった。

　こんな文章を打ちながら自分の動画リストを見て、どれも好きだなあとつぶやく夜。
　よっしゃ今度はどんな曲作って上げようかな。未だ着地しないデモと戦いながらも妄想は膨らみ続けています。多分この行為は、一生やめられないんだろうな。

　細やかな私を見つけてくれた貴方、ありがとう。
　どうぞ、私も楽しむので、ぜひ貴方も楽しんで。