SWEET DUET「君と一緒なら、私はどこへだって行ける」(エイラ生誕記念22.02.2019) ①

朝、久方ぶりに素面でいつもより一本早い列車に乗り、通勤中のヒマ潰しにTwitterを流していると、今日(2月22日)が「エイラ」の誕生日であることに気付いた。

エイラ・イルマタル・ユーティライネン。
アニメ『ストライクウィッチーズ』のキャラクターである。

彼女は僕にとって、一番共感できるウィッチだ。
(一番「好き」なのはミーナなのだが)
特に、おっぱい星人なところと、想いを寄せる相手サーニャとの関係において。

そこで今日は、スオムスのトップエース、エイラに焦点を当て、ストパンについて書くことにする。
何しろ朝思い立ったばかりで夜書き始めているのだから準備不足もいいところだが、お付き合い頂ければ幸いだ。

ストライク・ウィッチーズ

少し古いアニメなので、軽く説明しておこう。

ストライク・ウィッチーズは、突如発生した謎の生命体「ネウロイ」から人類を守るために闘う魔法少女「ウィッチ」達の物語である。
時代設定としては、世界大戦が起こらず、日本(劇中では「扶桑」と呼ばれる)が大陸と太平洋に進出しなかった場合の1940年代、といったところだろうか。
ウィッチ達は従来各国の国軍に配備され、国毎に縦割りで戦っていたが、ヨーロッパ大陸の大半がネウロイに征服されたことを受け、より柔軟かつ効率的に戦うため、各国から選抜されたウィッチ達での多国籍部隊を結成する運びとなる。それが第501統合航空戦闘団「ストライクウィッチーズ」だ。

ちなみにこの501部隊が戦果を上げたことで同種の統合航空戦闘団が次々と結成され、そちらにスポットを当てた作品もある。
部隊によって隊内の雰囲気が随分違って、501「ストライクウィッチーズ」は隊長兼寮母のミーナの庇護の下での留学生のWG(共同生活)というか、いみじくもミーナが作中で言ったように、「家族」のような親密感がある。502「ブレイブウィッチーズ」はより「リアル職場」のようなクールさがあり、506「ノーブルウィッチーズ」は「小さな騎士団」だろうか。
これらウィッチーズの物語をまとめて「ワールドウィッチーズ」と呼ぶこともある。

多分『艦これ』に世界観は近い。「ネウロイ」と「深海棲艦」はどことなく似ている気もする。
というか、僕自身『艦これ』発『ガルパン』経由でストパンに遡ったクチで、実はこのアニメをリアルタイムでは見ていない。
だから正直偉そうに記事を書けるのは気が引けるのだが、それでも大好きなエピソード(ミーナの過去が描かれる『君を忘れない』、今回取り上げる『空より高く』、そして『スースーするの』『モゾモゾするの』)は30回以上観たし、何よりこの作品が好きだから、書いてみることにする。

「あいつはひとりぼっちだけど、サーニャはひとりじゃないだろ」(第一期第六話「いっしょだよ」)

エイラが活躍するエピソードを、サーニャとの関係をテーマにピックアップし、つないでみる。本当は『スースーするの』『モゾモゾするの』の(半場お約束になった)「寝ぼけて逆夜這い」や、ちょっとエッチなシーンも魅力的なのだが、若干コメディリリーフ的で語りようがないというか、あの面白さは言語化しようがなく、あの二人のキャラと関係性を理解した上で実際に視聴しないとわからないと思うので割愛する。
というか復習する時間がなかった。

まず第一期、ブリタニア(イギリス)時代の時のエピソード『いっしょだよ』。

このエピソードでは、普段はサーニャが一人で行い、たまにエイラがサポートしている夜間哨戒に、主人公の宮藤が夜間戦闘専従班として加わる。

夜間の任務が多く他のメンバーとすれ違いがちで、おとなしい性格も災いしてメンバーと仲良くなれないサーニャ。
エイラはそんな彼女の保護者、理解者として「独り占め」したい一方、他のメンバーに自慢したいし、「ひとり」にしたくない。
そこで二人の中に入って来た宮藤は、なにかと「ちょうどよかった」のだろう。夜間専従班として他のメンバーとは違うタイムテーブルの中で生活しながら、3人は親密になっていく。

内気だったサーニャのほうが、実は宮藤に対してより心を開いていたのかもしれない。オラーシャ人(ロシア人)はシャイだが、一度打ち解けると存外に情愛深いものだ。

「二人だけの秘密じゃなかったのかよー」

少しすねたように、エイラはなじる。
ある晩の哨戒任務中、宮藤がその日誕生日だったことを告げた。「特別な日だから」ということで、サーニャは宮藤に、夜間飛行中のちょっとした楽しみを教えたのだった。

夜間は他に飛ぶものがなく、空が静まる。
そのため地平線の向こうの遠くからのラジオの音が聞こえるのだ。
ドーバー海峡の対岸までネウロイに攻めこまれ、周りを海に囲まれた絶海の孤島になったイングランド島にいる彼女達にとって、ネウロイ化した欧州、オラーシャ、ウラルの山を越えた彼方からの「声」は、人の「生」を感じさせる尊いものだった。

「二人だけの秘密じゃなかったのかよー」

長く二人だけで夜間哨戒していたエイラは、その楽しみを簡単に話してしまったことがおもしろくなかったようで、ふてくされている。

ラジオを聞いていると、三人は「サーニャの歌」を聞く。
昔サーニャの父が彼女のために作った、サーニャお気に入りの曲。
彼女の父はまだ生きていて、電波に乗せて聞かせているのだろうか。

しかし聞き惚れる間もなく、すぐ近くでこの同じメロディーを化け物の声がなぞるのが耳に入る。

ネウロイだ。
こいつは何故か、サーニャだけを狙っている。

サーニャは自分を狙ってきたネウロイと、ひとりで戦おうとする。
巻き込みたくなかったのだ。

ネウロイの攻撃で傷付いたサーニャの前に入り守ったのは、エイラだった。

「あいつはサーニャじゃない。
あいつはひとりぼっちだけど、サーニャはひとりじゃないだろ。
私たちは、絶対負けないよ」

右手にサーニャのフリーガーハマー(ロケットランチャー)、左手に自分のMG42軽機関銃を構えて仁王立ちしながらエイラは微笑む。

「これがチームだ!」

エイラ、サーニャ、そして宮藤の連携は完璧だった。

サーニャは魔導針で夜間でも雲の中でも敵の動きが把握できるので、エイラにネウロイの動静と位置を伝える。
エイラは少し先の未来を予知できるから、攻撃を微調整したり、敵の攻撃をかわすことが出来る。
エイラが攻撃に専念出来るよう、シールドで守るのは宮藤の役割だ。
誰が指示するでもなく、完璧に連携したのだった。

シールドに専念している宮藤の銃を抜いてサーニャ自身も攻撃に加わり、ついにネウロイは倒れた。
サーニャ、そしてチームの勝利だった。

撃破したネウロイの欠片が星屑のように降り注ぐ夜空で、サーニャの歌は未だ終わらず、響き続ける。
サーニャはさらに高い空に上がり、自らを世界にさらけ出す。

「お父様、お母様、サーニャは、ここにいます」

今日は、サーニャの誕生日でもあったのだ。

「サーニャのことが大好きな人なら、誕生日を祝うなんて当たり前だろ。
世界にそんな人がいるんなら、こんなことだって起こるんだ。奇跡なんかじゃない」

優しいんですね。
そう言われたエイラは、照れて口ごもるのだった。

「あいつらのせいで全然サーニャと一緒にいられない」(『ブレイブウィッチーズ』第十三話(特別編)「ペテルブルグ大戦略」)

『ブレイブウィッチーズ』は、ブリタニア駐屯時代の501部隊がガリア(フランス)解放後解散し、ロマーニャ(イタリア)で再結成する(ストパン第二期)までの「戦間期」の東部戦線、ペテルブルグで戦っていた502部隊「ブレイブウィッチーズ」の物語である。

この戦間期にスオムス(フィンランド)で軍務に従事していたエイラとサーニャが、サトゥルヌス祭(クリスマス)から年明けにかけ、助っ人としてペテルブルグに滞在していた時のエピソードだ。

エイラは、ペテルブルグの街をサーニャと「ふたりっきりで」散策したい。
しかしブリタニア時代よりも人に打ち解けるようになったサーニャは、冷静な戦況分析の目、エースとしての名声、料理上手などの面を買われブレイブウィッチーズの隊員から人気を博す。サーニャの周りにはいつも誰かがいて、サーニャもそれを楽しんでいるようだった。

「あいつらのせいで最近ぜんっぜん一緒にいられないよぉ…」

大晦日の夕刻、サウナで同郷の502部隊員ニパの豊満なおっぱいを揉みながら、エイラはぼやく(文章にすると凄い状況だ…)。

年上の保護者として、そしてパートナーとしてサーニャをみていたエイラにとって、サーニャがみんなの中に溶け込み「ひとり」じゃなくなることが嬉しくもあり、寂しくもあったのだろう。彼女を「独り占め」出来ないことが。

同席していてニパと同じ「被害」にあった扶桑の二人は、しばらくエイラを無視し、年末年始の当地での過ごし方について話す。
ニパがスオムスでの年越しの行事について話し始めたとき、エイラの中で閃いた。

「でかしたぞ、ニパ!」

後輩ニパの頭を激しく撫でてから、エイラは文字通りサウナから「跳んで」出ていく。
スオムスでは、二人で一緒に花火を見ると、幸せに慣れると言われているのだ。

「却下だ」

しかし資源不足の折、隊長ラルは花火の打ち上げなど許可しない。

「ケチ!」

ふてくされて隊長室を出ていく。

結局二人がやっと二人きりになれたのは、戦いの夜空の中だった。
ただし、最高に幸せな状態で。

夜の「納会」的なパーティーの場、サーニャの作った料理にみんなの賞賛が集まり、なかなか近寄れないエイラがふくれている時だった。

ネウロイが、来た。

夜間戦闘の経験豊富なエイラとサーニャが中心となる小部隊が迎撃にあたる。
「無傷のエース」と呼ばれるエイラの格闘戦に、他の誰もついてこれない。
未来予知が出来る彼女はミニマムな動きで敵の攻撃を避け、超近距離で弾丸の雨を降らす。
サーニャはその合間をぬってロケットを撃ち込み、敵にダメージを与える。

そしてサーニャは、未来予知するエイラのそのさらに先を、「予知」することができるのだった。

攻撃を受け弱ったネウロイは突如スピードを上げ、その場を離脱する。
その進む先には、502部隊の基地があった。
急いで追撃しよう。

慌てる一同に、サーニャは言った。
大丈夫、と。

サーニャはわかっていた。
自分の信頼するパートナーが、今この時どこで何をしているか、手に取るようにわかっていたのだ。

突進するネウロイの前に、銃を構えた一人の銀髪のスオムスウィッチが立ちはだかる。

「悪いな、お前の動き、すべて見えてんだ」

猛スピードで突っ込む敵にすれ違いざま一連射(バースト)、それだけで充分だった。
少し進んでネウロイは止まり、一拍子置いて砕け散った。

また一人で年越しか。
ため息をつくエイラの手を、白い小さな手がきゅっと握った。

「お疲れさま、エイラ」

彼女の使い魔黒猫がするように、エイラの気付かないうちそのそばにひっそりと、サーニャは滑り込んでいた。

「今年もよろしくね」

花火のように輝くネウロイの欠片を隣あって眺めながら、サーニャは微笑む。掴んだ手を、放さないままで。
照れたエイラは口ごもるばかりで、固まって動けないのだった。

こうして通して見ると、サーニャは随分成長したように思える。
内気で引っ込み思案、「いるかいないかわからない」と言われたサーニャが、エイラ以外の人とも仲良くできるようになり、大事なパートナーが何をするか、何を思っているかもよくわかっていて、そばにいて欲しい時にいつも一緒にいてくれる、気遣いのできる子になっていた。

今度は、エイラが殻を破る番だ。

シールドを使わない「無傷のエース」が自分のプライドと弱さと闘い、サーニャを守り、サーニャと共に生きる覚悟を決めた名エピソード、「空より高く」は、次の記事で取り上げる。
大事なエピソードだからこそ、じっくりと語りたいのだ。

そしてエイラの誕生日中に記事を書き上げられず、自分としては心残りだが、次回の記事で挽回したい。

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