“Each Day is Valentine’s Day”~MY FUNNY VALENTINE~
ここ2、3年は、バレンタインに行きつけのカラオケスナックで「My Funny Valentine」を歌うのが恒例になっている。
もともとシナトラは好きだったし、お客さんの年齢層的に、「ウケ」がいい楽曲だ。個人的にはマイルスがコルトレーンらとセッションしたアルバム「Cookin’」の演奏が好き(というか原体験)なのだが、彼自身シナトラから多く学んだのだし、僕にはトランペットが吹けないわけで。
そういえば以前雑誌でマイルスのこんなコメントを読んだことがある。
「俺はシンガーのように演奏しようとしているだけだ。フランク・シナトラが歌うように演奏できたら最上等だぜ。トランペットを始めた頃、俺はフランクの歌を研究した。フレージングだ。どこで吹くか、どこで吹かないか。その『どこで』が俺だけの秘密だ。それに俺は、最高のサウンドは人間の声だと思っている。だからシンガーが歌うようにトランペットを吹いているのさ」
PLAYBOY VOL. 32 NO. 8 AUGUST 2006 p34
というわけで、僕もマイルスのように、フランクの歌をカラオケで歌いながら、「フリージング」というやつを研究しているわけだ
(事実、フランクの歌をカラオケで完全にコピーして歌いきろうとすると、あの独特の「間」の取り方が勉強になる気がする。「As Time Goes By」とか、「Fly me to the moon」とか)
バレンタインとは関係ない!
脱線したので話を戻す。
「My Funny Valentine」は言うまでもなくジャズのスタンダードとして広く認知され、男女問わずいろいろな歌手に歌われ、先のマイルスのように楽器演奏の題材にもなっている。
しかしここまで各方面に枝分かれしたからこそ、元々の「根」、ルーツに再び目を向けることも、無駄ではないだろう。
結構有名な話かもしれないが、この曲はバレンタインデーとは直接には関係がない。
タイトルの「ヴァレンタイン」は男性のファーストネームで、女性が男性をからかいながらもいとおしむ歌なのだ。
元々は1937年初演のミュージカル「Babes in Arms」の挿入歌らしい。不勉強ながら観ても読んでもいないが、このミュージカルでは他にも後にスタンダードナンバーとなる楽曲がいくつか歌われていて、中でも「The Lady is a Tramp」はよくデュエットするので一度勉強してもいいかもしれない。映画にもなっているようだ。
「現代訳」の試み
毎年歌ってはいるが、ぶっちゃけていうと、この歌の歌詞の理解が「深い」とはお世辞にも言えないと自覚している。
まず第一に、すでに述べたが、僕はこの曲をマイルス・ディヴィスの「インストゥルメンタル」パフォーマンス経由で好きになった。「歌詞」とは離れたところで、純粋な「音楽」として、音の戯れとして好きになった、とも言えようか。なので「詞」に対する思いがあまり強くなかったりする。
第二に、この歌詞の「文脈」に対する知識不足。
これが挿入されていた元ネタのミュージカルを未見なこと、30年代のニューヨークの文化について無知なことだ。これが分からないと、語学的な「意味」は分かっても、雰囲気や空気感、特に歌い手と歌いかける「相手」との関係性が立ち上がってこないというか。
もちろん、勉強すればいいことではある。
しかし今回はあえて、この名作を「現代風」にアレンジして超訳してみたい。
そのほうが、この詞をより身近に感じられるのではないか、と思うのだ。
「ファニーなヴァレンタイン」
あたしのファニーなヴァレンタイン
甘い囁きでいつも口説くのに、三枚目なのね
あんたがいると、あたし心の底から笑っちゃうの
キメてるのに何故かウケるのね
インスタ映えしないわ
でも本当は、そんなあんたをイジってひとつの「作品」に仕立て上げるの、好きだったのよ
あんたはギリシャの英雄にはなれないわ
口元にしまりがないもの
あんたが何か言おうとして口を開くと、なぜか笑っちゃうの
でもあたしのために、髪の毛一本だって変わろうなんてしないでね
あたしのせいであんたがあんたじゃなくなったって自分を責める、そんな苦しみを与えないで
だから可愛いヴァレンタイン、「今のまま」がいいの、そのままでいて
1日1日が、ヴァレンタインの日なのよ
訳を終えて
正直、かなりぶっ飛んだ訳になってビックリしている。「意訳」どころか完全な「超訳」だ。
なんとなく初期の峰不二子っぽくなってしまった。
そして、かなり「自分」に寄せてしまったのが見えて辛くもある。
しかしこの訳出を通じて、歌詞について「考える」ことができた。これが明日のパフォーマンス向上に、つながるといいのだが。
Happy Valentine.
Each Day is Valentine Day.
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