買い物はつづく
人生を豊かにするための買い物、というものに、縁が薄いような気がする。
人生を豊かにする気が無いわけではない。
お給料が豊かなときは、大量に本を買ったり、CDを買ったりしていた。
でも、それは人生を豊かにする買い物とはちょっとちがうような気がする。
わたしにとって、それらは心を正常に保つために必要なものだったから。
必需品。それに近い。
そもそも、人生を豊かにする買い物といって思い浮かぶものは、たとえばきれいなティーカップであったり、最新式の家電であったり、気に入ったメイク道具だったりする。
けれど、それだって誰かにとっては、心の必需品だったりするはずだ。
とにかく。
わたしにとって買い物は、人生を豊かにするものよりも毎日の必需品に満ちていた。
若いころから、日々の道連れは、たとえば立ち仕事の時は足に合うローヒール。
足で稼ぐ営業の頃は、できるかぎり安値のスーツに頑丈なカバン。
店頭の接客業をやってた時は、冷房に冷える体を温めるカイロやタイツ・ストッキング。
むくみの酷さに音を上げて、着圧ソックスを使っていたりもした。それは、徐々にシルクの五本指ソックスやレッグウォーマーに変わっていった。
少しでも体が楽になるものを探し、健康グッズを見て回る。
自分の体に合うものは、すりきれるまで手入れして、使い倒した。
二十代の頃に買ったむくみを軽くする医療機器は、コードが切れてもテープで修繕して使った。
わたしにとって、買い物は生きることそのものだった。
職人が道具を手に入れ、戦士が武具を調達するように、わたしも生きることをあきらめないためにそれらを買い求め、使えるだけ使い倒した。そして、好きな本を抱きしめて眠る。
そのくり返し。
必需品とは、つくづく人生の相棒なのだなあと思う。
それらの相棒は、使い古された武具のように、今もわたしのかたわらにある。
これから先も、きっと変わらないだろう。
買い物は続く。
人生も、続く。
いつもありがとうございます。心の栄養のためにたいせつに使わせていただきます。