テレ東ドラマシナリオ、案2。タイトル『だって、”好き”って言ったら、姉が殺しにきます!』


〇街
   お姫様(洋風)のような格好で、美少女の梨奈(16才)が、道路を歩いていく。
   道路の横で、人々が土下座し、ガードレールのように並んでいる。
   突き当りのビルの壁に、なぜかドアノブ。
   梨奈がドアノブを引くと、中は、お姫様が住んでるかのようなお部屋。
   辺りは、古い漫画や、古い漫画グッズで埋め尽くされている。
   莉奈はフカフカのソファーに座るが、顔は沈んでいて、ため息。
莉奈「お外の世界は危ないからって、お父様が、お屋敷内に、東京にソックリな街や、遊園地や、私設テレビ局まで創って下さったけど……わたくしはやっぱり、本物のお外に行ってみたいなあ~」
   ドアからノック音。
メイ「お嬢様、失礼いたします」
莉奈「あっ、メイちゃん!」
   メイドの格好のメイ(18才)が静かに入ってくる。
莉奈「ねえ、知ってる?! お外では、ドラえもん様が不思議な道具をお出しになって世の中がハチャメチャになったり、ケンシロウ様が北斗神拳で悪い輩から日本を守って下さったりしてるのよ! ああ、いつかお会いしてみたいわ~」
   莉奈はドヤ顔で、目をキラキラさせて言う。
 メイ「お嬢様、あ、あのう、それは……」
莉奈「会えるよね! もし会えないなんて言われたら、わたくし死んじゃう!」
メイ「は、はい、実は、メイも会いたいと思っておりました!」
莉奈「だよね~!」
   莉奈はメイに近づき、小声で言う。
莉奈「実はわたくし、凄いものを発見しちゃったんですの」
メイ「(嫌な予感という表情)な、なんでしょう?」
莉奈「ジャジャーン! インド人もビックリよ!」
   莉奈は、古い少女漫画を見せる。
莉奈「恋の秘伝書を発見しましたの! なんと、食パンをくわえて「ちこくちこく!」と魔法の呪文を唱えながら走ると、角で、『運命の殿方』とぶつかって出会えるんですって!」
   メイは言葉につまる。
莉奈「で、メイに、秘密の相談なんだけど……」
メイ「申し訳ございません、私は次の仕事が……」
莉奈「メイの好きなイケメンアイドル。わたくしのお父様の力があれば、すぐに結婚できますわよ」
   メイは固まる。

〇街
   歩道橋の上で、仁王立ちで辺りを見回す莉奈。女子高生の格好をしている。
莉奈「これが本物の東京?」
   スマホからメイの声(TV電話)
メイ「いかがですか、お嬢様?」
莉奈「う~ん、空気汚いし、うるさいし……なんかいまいち。お父様の街の方が良いですわ」
メイ「一時間だけですよ! はやく用事をお済ませください! お嬢様をコッソリ、外に出したなんて事が、御主人様にバレたら、私はクビになってしまいます!」
莉奈「はいはい」
メイ「(あわてて)あ、そうだ! くれぐれも、莉奈様のお姉さまである、リオ様には御注意を! いつも莉奈様を監視しておられますので!」
莉奈「今は寝てるみたい。バッチグーよ!」
メイ「バッチ何? まあ、いいか。(小声)とにかく、どうせ出会う訳ないから、一度やって、作り話だとわかれば、きっとあきらめて下さるわ……」
   莉奈は口に食パンをセットし、クラウチングスタートの格好をする。
メイ「では、よ~い……」
莉奈「ふはーふぉ!(スタート!)」
   全力で走り出す莉奈。
   ヒザを高く上げ、綺麗なフォームで、息を切らし、体中に汗をふき出させ、全力疾走していく。
メイ「お、お嬢様、タイムは関係ないかと! 東京の街中を全力疾走したら危ない!」
   莉奈は人ゴミをたくみによけ、全力疾走を続ける。
メイ「ウソだろ! 通行人の背中をスリップストリームにして、どんどんタイムを縮めていく! お嬢様は一体、どんな漫画を読んでらしたの?!」
莉奈「あ、あの漫画と同じ角! きっと、あそこですわ!」
   莉奈は猛スピードで、角に突っ込んでいく。
メイ「(小声)お願い、誰も来ないでえ!」
   莉奈は何者かにぶつかって、後ろへ大きく弾け飛ばされる。相手もボールのようにはじけ飛ぶ。
莉奈「い、たたたた……」
   莉奈は尻もちをついたまま、顔を上げる。
   遠くで、宅男(16才)が、尻もちをついて、うなっている。
宅男「な、何? イノシシ? シカ? いたたたた……」
   宅男は、みるからに気持ち悪い系のオタクな感じで、服装も汚い。顔はブサイクでメガネ。
莉奈「わたくしの運命の殿方!」
メイ「ウソでしょ!」
   宅男がヨロヨロと立ち上がろうとすると、莉奈は宅男をグイ! と引き寄せ、口をとがらせ、そのキス顔をじりじりと近づけていく。
メイ「お、お嬢様、いけません!」
宅男「なんだ?! 誰だよ、お前!」
   だが、その瞬間、莉奈の表情が鬼のように変わる。
   莉奈はどこからかチェーンソーを出し、躊躇なく宅男に振り下ろす。
宅男「ひいっ!」
   宅男は必死でよけるが、服がわずかに切れ、ヒラヒラと宙を舞う。
宅男「(震えながら)な、な、な、なんなの……?」
リオ「莉奈、言っただろ! お前が好きになったヤツは、あたしが必ずブッ殺すって!」
メイ「あ、あわわ……莉奈様のもう一人の人格である、リオ様が起きてしまった……」
リオ「貧乏人や、アホや、寿司をシースーなんて言う男はダメだ! もっと現実を見ろ! 好きになっていいのは金持ちだけだ!」
   莉奈の表情が戻る。
莉奈「確かに、この殿方は、貧乏くさくて、アホみたいですけど……それでも、わたくしの運命の殿方ですのよ!」
   莉奈はまた、キス顔を宅男に近づける。
   莉奈の表情が鬼になる。
リオ「じゃあ、殺しとく!」
   リオはチェーンソーを振り下ろし、宅をはよける。
   莉奈の表情が戻る。
莉奈「お姉様のイケズ!」
   莉奈は、宅男の胸ぐらをつかんで引き寄せる。
   莉奈の表情が鬼になる。
リオ「排除する!」
   リオはチェーンソーを振りまわし、宅男はよけるが、前髪が全部飛んでいく。
宅男「な、何なんだよ! 殺人鬼のいっこく堂か?! 助けて、おまわりさ~ん!」
   宅男は走って逃げて行く。
莉奈「お姉様にいくら邪魔されても、あきらめませんわ! だって、わたくしの運命の殿方ですもの、きっとだいじょうV!」
   莉奈は、宅男の後姿を見つめながら、指でVサインをする。
   遠くから、壁に隠れて、女子高生姿の雪美(16才)が、莉奈をじっと見ている。メガネっ娘。
雪美「今の……何だったの? 独り言? いえ、きっと二重人格だわ。制服はうちのだけど、あんな『新人だけど映画やドラマにバンバン出て、ただいまブレイク中の女優』みたいな顔の生徒、いたかしら?」
   雪美は腕組みをし、右手をアゴにあて、ニヤリと笑う。
雪美「二重人格……『解離性同一性障害』の一つ。アメリカではビリー・ミリガン事件の例がある……ふふ、面白いわね。オカルト部の部長として、調べてみる価値がありそうだわ」

〇学校・廊下
   莉奈がキョロキョロしながら歩いている。
メイ「お嬢様、一時間の約束ですよ! もうお帰り下さい、私がクビになってしまいます! そもそも知らない学校に不法侵入ですよ!」
莉奈「アイドルと結婚なんて、ファンの一生の夢だよね?」
メイ「あと一時間だけですよ! 本当にこれが最後ですからね!」
莉奈「アイムソーリー、ヒゲソーリー!」
メイ「(小声)さっきから、ずっと何言ってんだコイツ」
莉奈「どうもあの殿方は、お姉さまが気に入らないようですので、新しい運命の殿方を、ここで探す事にしますわ」
メイ「(小声)前のは、あっさりあきらめるんかい」
   莉奈は少女漫画を出して、パラパラと読む。
莉奈「なるほど! 図書室で本に手をのばし、あ! っと手が触れ合った方が、運命の殿方ですのね!」
メイ「あのう、それは……(小声)ま、いっか。はやく終わらせて、とっとと帰って来てもらおう」

〇学校・図書室
   莉奈は少女漫画を読みながら歩いている。
莉奈「え~と、まずは、こうやって手をのばして……」
   莉奈の手に、誰かの手がツンと当たる。
莉奈「え、もう?」
   莉奈は少女漫画から、ゆっくりと顔を上げ、相手の顔を見る。
   それは宅男だった。
宅男「あ!……」
リオ「あ! じゃねーよ! なんで、またテメーが出てくんだよ!」
   リオはどこからかスタンガンを出し、バチバチいわせると、振り回し続けて、宅男に当てようとする。宅男は必死で、ギリでよけ続ける。
宅男「お前こそ、なんでいつも僕を殺そうとすんだよお!」
莉奈「運命の相手だからですわよ!」
宅男「言ってる意味がわかんないよお!」
   宅男は図書室を出て、走って逃げていく。
宅男「校長せんせ~い! いっこく堂に殺される~!」
莉奈「あ! お待ちになってえ!」
   莉奈が図書室を飛び出すと、宅男はベランダに逃げる。
莉奈「そんなに恥ずかしがらないで!」
   莉奈は宅男を追いかける。
   だが、勢いあまって、窓から落ちそうになる。
莉奈「きゃああああああ!」
   三階から落ちそうな莉奈を、大きな腕がサッとつかむ。
   そして引き上げ、優しく抱きしめた。
   莉奈が顔を上げると、イケメンの優馬(26才)が、微笑んで見つめていた。ジャージ姿。
メイ「超イケメン高校生! あたしの推しより、数十倍かっちょいー!」
莉奈「あの……」
優馬「好きです」
莉奈「はい?」
優馬「あなたに、一目惚れしてしまいました」
メイ「キャアアアー!」
莉奈「結構です」
メイ「なんですと?!」
莉奈「わたくしにはもう運命の殿方がいますので」
メイ「どっちかっていうと、こっちの方が運命の出会いだろ! 頭おかしいんか!」
莉奈「それに失礼ですよね。出会ったばかりで、急に好きとか」
メイ「誰が言うてんねん!」
莉奈「もういいかげん、その手を離して下さい。ちょっと痛い……」
優馬「あ、すみません。あなたに、つい見とれてしまって……」
   優馬は手を離そうとする。
莉奈「はやく、その手を……」
   莉奈の表情が鬼になる。優馬はハッとする。
リオ「離せっていってんだろ、この盛りのついたオス猿があ! 貧乏人で、アホで、寿司をシースーって言うような奴は、絶対に莉奈に近づけさせねえんだよおおお!」
   リオはどこからか日本刀を出し、優馬の頭に振りおろす。
   パアン! と大きな音。
リオ「なにい!」
   リオは目をむく。
   優馬は、日本刀を真剣白刃取りして、リオの押しに耐えている。
リオ「あ、あたしの『真空時空斬り』を受け止める……だと!」
   莉奈の表情が戻る。
莉奈「あ、あの、申し訳ございません! 今のは、わたくしの姉でして! 姉って、ようはあたしの人格の一つで、あの、じ、実在はしてなくて……でも、サイコパスで、わたくしの邪魔ばっかりしてきて……」
   莉奈の表情が鬼になる。
リオ「莉奈! オス猿に尻尾ふってんじゃねーよ!」
優馬「お姉さんでしたか! はじめまして、優馬と申します! 気軽に優馬って呼んで……」
リオ「このやっかいな状況をすんなり受け入れてんじゃねー!」
   刀がギリギリと優馬の顔に近づいていく。
   優馬は刀を挟んだ腕ををひねり、リオを引き寄せる。顔と顔がキスするくらい近い。
リオ「なっ、なにする気だ!」
優馬「いい加減やめてくれないと、その可愛い唇に何かするかもしれませんよ……」
   リオの頬が赤くなる。
リオ「オス猿め! お、覚えてろよお!」
   莉奈の表情が戻る。
   莉奈は刀をしまう。優馬はフウと一息つく。
優馬「たとえ実在してなくても、サイコパスでも、君のお姉さんなんだよ。みんなで仲良くしなきゃね」
   優馬は優しく微笑み、白い歯がキラリと光る。
   優馬は莉奈の頭をポンポンとすると、窓からのさわやかな風を受けながら、去っていく。
リオ「実在もしてないのに、こんなに優しくしやがって……ふん! 変な奴だな……」
   リオの頬は赤いまま。
莉奈「そうですわね。実在してないのに仲良くしたいとか、まったく変な人ですわね!」
リオ「ブッ殺すぞ、お前。自分だけど」

〇校庭
   莉奈がスマホを見ながら歩いている。
莉奈「もういいですわ。今日はもう帰りましょう。そろそろお父様も帰ってくる事ですし」
メイ「だめです、お嬢様」
莉奈「はい?」
メイ「あのイケメンと、なんとかお友達になれるまで頑張りましょう!」
莉奈「でも、この事がお父様にバレたら、あなた、アイドルと結婚できなくなりますわよ」
メイ「そんなの、もうどうでもいい! お嬢様は黙って、私の言う通りになさって下さい!」
莉奈「メ、メイが怖い……」

〇学校・ボクシング部の外
   莉奈は、窓から部室をのぞいている。
メイ「あの力強いお腕、あのお方はきっと、スポーツ系の部活に入っておられると思うのです。だから片っ端から部室をのぞいていけば……」
莉奈「ふ~ん」
   部室に、優馬が入って来る。
メイ「ビンゴ!」
部員「あ、先生! 今日もよろしくお願いしま~す!」
   優馬は笑顔で手を振る。
莉奈「まあ、あの人、教師だったの?! 先生が生徒に手を出すなんて、ますます問題だわ!」
メイ「いい! よりいい! 私も出されたい! 手でも、足でも、どこでも!」
   莉奈は、何者かに突き飛ばされる。
莉奈「いたっ!」
女生徒「どきなさいよ、邪魔!」
   莉奈がボーッと見ていると、窓の外は、女生徒たちのギャラリーでみるみる埋めつくされていく。
女生徒「優馬さま~!」
   優馬はにこやかに手を振る。
莉奈「人気あるんだな~、あのエロ教師」
メイ「チッ! 盛りのついたメス共め。イケメンだと、誰かれかまわずケツふりやがる!」

〇学校・ボクシング部の中
   ゴリラのような顔のゴリ男が、サンドバッグを叩いている。
   凄まじい連打で、部員たちはチラチラ見ている。
部員A「やっぱ、うちのエースはスゲエなあ」
部員B「いままで、全試合ノックアウトだもんな。ふるえるぜ」
   ゴリ男は外のギャラリーをチラ見して、舌打ちすると、打つのをやめて、優馬を見る。
ゴリ男「なあ、先生って、昔、アマチュアのチャンピオンだったんだろ?」
優馬「ああ」
   ゴリ男は優馬の顔をのぞきこんで、バカにしたように笑う。
ゴリ男「一つ、手合わせ頼むよ」
優馬「(微笑んで)すまないな、今はもうやってないんだ」
ゴリ男「なんだよ? 生徒に負けるのが怖いのか? やっぱりあんたは顔だけかよ?」
   ゴリ男はみんなを向く。
ゴリ男「弱いやつになんか、教えて欲しくないよな。なあ、みんな!」
   皆はうつむいて、黙っている。
   優馬は少し黙るが、優馬は部屋のすみに行くと、グローブをつけはじめる。
ゴリ男「そうこなくっちゃ、モテ男さんよ」
   ゴリ男は両手のグローブをパンパンと合わせる。
   優馬がリングに上がると、ゴングが鳴る。
   優馬が構える間もなく、ゴリ男はダッシュ。
ゴリ男「てめえのその綺麗な顔を、俺みたいなブス面にしてやるぜえ!」

〇学校・オカルト部の部室
   生徒数人がPCで、モアイやピラミッドなどの画像を見ている。
   部屋の隅にはグレイの等身大フィギア。壁には『オカルト部へようこそ!』とある。
   雪美がPCの前で、頭を抱えて、うなっている。
   PCの画面には、莉奈の笑顔の写真。
雪美「なんなの、この子! 双子の姉が、戸籍から消されてる! どうして?」
雪美「いったい、あの子の過去にどんな闇が……」
   雪美はキーを押す。画面に『パスワードが違います』と文字が点滅。
雪美「(首を左右に振りながら)隠されているというの?」

〇学校・ボクシング部の中
   優馬はダウンして、はいつくばってうなっている。
   女生徒のギャラリーがパラパラと減っていく。
優馬「ハハ……やっぱ、年には勝てないかな」
   フラフラと立ち上がる優馬。
ゴリ男「おっと! 休ませねえよ!」
   すかさずゴリ男が、優馬の腹へ一発。
   優馬はうなり、莉奈の前に、優馬の血が飛ぶ。
   莉奈は気絶し、目は閉じられ、ヘナヘナと座り込む。
   だがすぐに、莉奈の目がパッと開く。
リオ「おいおい、これからが面白いとこなのによ」
メイ「優馬さま、頑張って! 私は見捨てませんよ! きゃー!」
リオ「コイツ、ずっとうるせーな。消しとこ」
   リオはスマホを消す。
   優馬はすでにフラフラで、ゴリ男の連打を、サンドバッグのように受け続ける。
リオ「ったく、しょーがねーな。生徒に負けちまったら、顧問のめんぼく、丸つぶれだろうが」
   リオは優馬に手を振る。
リオ「おおーい!」
   優馬はチラリと見る。
リオ「勝ったらキスしてやっから! い、いや、わたくしがキスしてさしあげますの! だから、必ず勝ちやがれ、ですの!」
優馬「!」
   優馬の目が生き返る。
ゴリ男「試合中、よそ見してんじゃねえー!」
   パン! 鋭い音がする。
   ゴリ男はロープに飛ばされ、ロープの反動でひっくり返って、大きな音を立てて、リング外に落ちる。
   ゴリ男はのびてしまう。
部員「こ、これが、あの伝説の優馬カウンター……」
   部員が走って、ゴリ男を見に行く。
   優馬を見上げて、首を左右に振る。
   ゴングが鳴り、優馬がガッツポーズ。
リオ「(しまったという感じで)あ……」
   女生徒のギャラリーから、黄色い歓声が上がる。
   だが、優馬はギャラリーをかきわけ、まっすぐリオへ向かう。
   上半身裸で、汗だくの優馬が、リオを抱きしめ、目を見つめる。  
   リオは顔が赤くなってふるえ、優馬を見つめたまま、動けない。
   優馬が顔を近づけ、リオは思わず目をキツク閉じる。
   優馬はそのまま、熱いキス。
   女生徒のギャラリーから、絶望の悲鳴が上がる。
   優馬はしばらくリオを見つめるが、何も言わず、部室に戻って行く。
   優馬はゴリ男の腕を、肩に抱えて、ゴリ男をベッドに寝かせて、タオルで血などを拭いてやる。
ゴリ男「せんせ……」
優馬「お前の顔、俺は好きだぜ。だって、誰よりもいっぱい練習しなきゃ、そんなボコボコな顔にはなんねーからな」
   優馬は微笑み、ゴリ男も腫れた顔で笑う。
   リオは、優馬の背中をボーッと見つめている。
莉奈「はっ!」
   莉奈は目を覚ます。
   すると、女生徒のギャラリーがいっせいに莉奈をにらんでいた。
莉奈「お、お姉さま、わたくしが気絶している間に、一体何があったのですか?」
リオ「さあね。あたしは、目つぶってたからさ……」
   リオは唇を、指でそっと触る。
莉奈「そうですか。とにかく、今はここから逃げた方が良さそうですわね!」
   莉奈は、あの綺麗なフォームで走り出す。

〇校庭(夕)
   莉奈はスマホを見ながら歩いている。
メイ「リオ様ひどい! 優馬様は、あれからどうなったんですか?」
莉奈「お姉様は、目をつぶってたから、何もわからないんですって」
メイ「ったく、リオ様はいつも好き放題やってていいですね!」
莉奈「とにかく、今日はもう遅いから、みんなでドロンしましょう。明日、また来ればいいでしょ?」
メイ「約束ですよ、絶対ですよ!」
莉奈「はいはい……お姉様もお疲れになったでしょう?」
   莉奈の表情は、莉奈のまま。
莉奈「お姉さま? まあ、今日はずいぶん早めに寝てらっしゃいますのね。色々あって、さぞお疲れになったのでしょう」
   莉奈はフフフッと微笑む。
   莉奈が校門まで行くと、校門の陰から、急に雪美が飛び出して来る。
莉奈「きゃ! どなたですの?」
雪美「(小声)お姉さんは?」
莉奈「今は寝てますわ。だから、あなた誰ですの?」
雪美「最初は興味本位だったけど、色々とあなたの事を調べているうちに、大変な事を見つけてしまったの!」
莉奈「大変な事?」
雪美「あなたのお姉さん、リオさんは、ただの人格じゃないわ。実在する、あなたの双子のお姉さんなのよ!」
莉奈「ど、どういう事ですの?」
雪美「『双子のシンクロ現象』ってあるの。 例えば、お姉さんが怪我すると、なぜか、妹も同じ場所を怪我したり……っていう、現代科学では説明できない現象。まあ、全ての双子に起こる訳ではないけれどね。とにかく、つまり、あなたは、どこかにいるお姉さんの意識をリアルタイムで感じて、それを自分の別人格だと勘違いしているだけなのよ!」
   莉奈はポカンとしていたが、ハッとして雪美の手をつかむ。
莉奈「じゃあ、お姉様は今、どこに?!」
   雪美は写真を見せる。
   莉奈は思わず息をのむ。
   それは、リオが薄暗い独房の中で、首輪でつながれている写真だった。
雪美「あなたのお父様は、リオの存在を消そうとしている。リオという黒歴史は、今ここに、鍵をかけて葬られているのよ」
莉奈「お姉さまは一体……何をしたというの?」
雪美「そこまではわからない。だけど、リオは、ある人物から、あなたを守ろうとしている事だけはわかった」
莉奈「その人物って、まさか……貧乏人で、アホで、寿司をシースーっていう殿方?」
雪美「そう。そしてその人物は、リオの黒歴史を開く、パスワードになるかもしれないの。気をつけなさい、その人物は、すでにあなたに近づいているかもしれないわ……」
莉奈「……」
   莉奈はしばらく、雪美と見つめあう。
雪美「(ハッとして)ちょっ、それどうしたの!」
莉奈「なんですの?」
   莉奈は、雪美の視線の先を見る。
   莉奈の首から、血がスーッと流れている。
莉奈「え! わたくし、何もしてないのに!」
雪美「双子のシンクロ……」
   莉奈はハッとする。
莉奈「お姉様!」

続く?

「チームライティング」という事ですので、完結していない状態ですが、上げさせていただきました。どこか良い部分があれば使ってやって下さい

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