日本はオワコンなんかじゃない
こんにちは、あめです。
8月17日、約1年間過ごしたイギリスを離れる日がやってきた。その約2か月半後には日本で働くことが決まっているから、イギリスに戻る予定はしばらくない。一時帰国ではなく、本帰国だ。息をのむほど優美なエディンバラの晴れた昼下がりとも、"vibrant”という言葉がぴったりな賑やかなロンドンの夜とも、しばらくはお別れである。その事実は、少し鼻の奥をつーんとさせた。
やっと美しいエディンバラの街並みや世界的に悪名高い食べ物 (実は世間で言われているほどまずくないと思う、個人的には)、あれほどわからないと騒いでいたスコティッシュ・アクセントにさえ、愛着が湧いてきたところだったのに。イギリスのアカデミック・カルチャーにも慣れ、4000ワーズのエッセイも悪戦苦闘しながらではあるが書き上げられるようになったのに。もう、離れてしまう。光のような速さで過ぎた1年間だった。
イギリスを離れるのは寂しかった。しかし同時に、日本に帰るのも楽しみだった。家族や友人、おいしい食べ物が待っている土地。母国語がいたるところで使われ、心理的安全性が高い場所でもある。期待度が高まるあまり、帰りの飛行機は東京で食べたいものリストを作っているうちに、乗り換えも含めた13時間が経過していた。
そして久しぶりの日本へ。1年ぶりに降り立つ日本への印象は、「清潔」。その一言だった。街にごみひとつ落ちていない。人々の身なりもとてもきちんとしているし、たばこのにおいも全然しない。1日の終わりに鼻をかむと、鼻が真っ黒になっていることに気づいて愕然とすることもない(ロンドンだと毎回真っ黒になる。たぶん地下鉄のすさんだ空気のせい)。
私が留学していたエディンバラは、比較的清潔な街であったはずなのだ。なんせ、街中が世界遺産に登録されているくらいなのだから。それでも、街中にあるごみ箱があふれかえっているのを見たのは1度や2度ではない。歩きたばこ、ポイ捨ても日常茶飯事だった。(たばこのモラルに関していえば、イギリスは圧倒的に遅れていると思う)
その次に気づいたのは、日本のインフラシステムの完成度の高さだった。公共交通機関、水道、ガス、電気。何をとっても完璧に作動する。電車は2分遅れただけで『遅れまして、申し訳ございません』とオーバーなくらいに謝ってくれる。そんなに謝らなくてもいいですよ、と逆にお願いしたくなるくらい。イギリスだと20分くらいの遅延だとアナウンスなんか行われない。むしろ、『遅いな!』と駅員さんに文句を言えば、"It is not my fault!"と逆ギレされるのが日常の一コマだ。
SNSを開けば、よく『日本はオワコン』なんて文字を目にする。日本の経済はずっと停滞しているし、社会問題は山積しているし、国外に逃げましょうという文言がだいたい、後に続く。確かに日本に社会問題は山積しているし、それは直面しないといけない事実だ。しかし、日本はそこまで『オワコン』じゃないと私は思う。この国では、週末中ずっと冷蔵庫が止まって、中の食材がすべてダメになることも、寒い冬に限って冷水しか出ないことも、室内温度5度以下なのに部屋にある暖房が全然作動しなくて、コートを着て部屋の中で過ごさなきゃいけないことも、ほとんどありえない。言うまでもないが、これらの出来事はすべて、世間的に『先進国』として広く知られているイギリスで、実際に私が身をもって経験したことだ。いつでも、どこでも、正確に機能するインフラがある、その事実だけでもう丸儲けだと感じる。ベーシックニーズがここまで確実に届けられている国は、『先進国』の中でもかなり希少だ。
海外で1年間過ごしてみることで、初めて日本のことを客観視できるようになったと感じる。そして、日本社会に対して解像度をさらに上げていきたいという意欲も生まれた。そのうえで再度、強調したい。日本はまだまだ捨てたものではない。本当に。
それでは!
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