「マイペースに編集の道をゆく」⑥

 「月刊カドカワ」の表紙をめくると出てくる、観音折りの目次の裏には「色付き壁新聞」と題したミュージシャン矢野顕子の連載があった。今読み返しても約400ページの一冊の中に特集や連載がぎっしり詰まっている。

 総力特集のつくりとしては、”スピリチュアル・メッセージ”と題したミュージシャンやアーティストの内面を掘りさげた記事を中心に、作品解説や作家対ミュージシャンのように分野が違う創り手同士の対談、特集のための創作など、”表現者の核”がよりよく伝わるように構成されていた。

 1990年代には「私の日常日記」という、著名人の約10日間の日記をベースにした連載があり、その流れを継ぐように「日記」「手紙」「往復書簡」「散文詩」など文芸誌の基本のような企画は取材対象がミュージシャン中心になってもよく使っていた。

 透明感ある詩世界の巻頭カラー連載をもっていた銀色夏生に代表されるように、「表現者にあこがれ、自分も詩や小説を書きたい」と思っている10代、20代の女子が読者の中心だった。

 90年代には「Olive」や「宝島」など元気なサブカルチャー誌が多かった。雑誌がファッションだけではなく、音楽、映画、演劇も確実に取り入れ、濃厚なワクワク感を発信していた時代だった。

 今思えば、サブカルチャー色も強かった「月カド」編集部で私は日夜、10代、20代の女子に届く、みずみずしい「行間」作りに奔走していたような気がする。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?