2019年の緑地帯5

 前回、書いたように編集部に在籍していたとき、私はミスター・チルドレンを担当していた。「すぐ人気者になるだろう」と業界での彼らの評判は高く、私もライブには足を運んでいたが、初めて桜井さんに会ったのは4枚目のシングル「クロス ロード」の発売前(1993年10月ころ)。他のミュージシャンへのコメントをもらうために事務所にうかがい、そこで取材させていただいた。

 それが縁で連載エッセイを担当することになったのが1994年当初。しかし、数カ月後に発売された「イノセント・ワールド」はミリオンセラーを記録し、彼らはすぐ爆発的な人気者になってしまった。となると、ちまちまと毎月エッセイなんて書く時間なんてなくなり、すぐに連載は終わることに。

 当時、その勢いにのって事務所は、彼らのドキュメンタリー映画「es」の製作を始め、並行して「es」の単行本製作も企画した。連載はすぐ終わってしまったが、連載を担当していた縁で、1995年4月1日に発売となった単行本「『es』ミスター・チルドレン370デイズ」の編集に携わることに。このとき私は初めて単行本の編集チームに入れてもらえた。

 映画やジャケットのアートデレクションを行う、コンテンポラリー・プロダクションの信藤三雄さんが書籍のデザイナー。オールカラーのビジュアルブックにはシングル「イノセント・ワールド」誕生前夜の94年2月から95年2月の「ツアーアトミックハート」最終日の横浜アリーナまでの様子が詰め込まれていた。当時のミスチルの飛ぶ鳥を落とす勢いまでも詰め込まれていた。しかし、単行本の制作期間はたったの2カ月。それに加え、月刊誌の編集の仕事も同時進行。とにかくハードだったことは鮮明に覚えている。頻繁に彼らのいる場所にライターと出向き、常に話を聞き、素材として必要な画像を集め歩いた。

 このころの話は、いまとなっては遠い昔の話だけど、いまだにミスター・チルドレンは第一線で活躍中。それだけでも心の中がほっこりする。










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