力学の超基礎を令和2年環境計量士過去問(環物問7,8)でやってみる
1.問7の解説
この問題は前回記事の理解だけで解けてしまうのでサラッと流してしまいたいところです。たぶん暗算でとりあえず問題のおさらい
時速30kmで進行している自動車が急ブレーキをかけたところタイヤの回転が止まり、10m滑って停止した。この自動車が時速60kmで進行していたとすれば、何m滑って停止するか。次の中から正しいものを一つ選べ。ただし、急ブレーキの後、停止に至るまで自動車が路面から受ける摩擦力は速さによらず一定とし、それ以外の影響は無視する。
さて、もちろん停止までにかかる時間を出して解いてもよいですが時速から単位直して―という感じで多少計算量多いです。なので、普通に力学的エネルギーが摩擦による仕事で熱エネルギーに変わったという方向性で解けばよいと思います。前回の通り、運動エネルギーKは
K = 1/2 m v^2
であり、急ブレーキのあとの摩擦力は一定ということに着目すると、摩擦力をFとでもすると摩擦による仕事Wは
W = F・Δx
いま、K = Wなので、vが倍になるとKは4倍、Fは変わらないのでΔxは明らかに4倍になるので、40mが正解です。運転免許をお持ちの方は、免許講習、自動車学校や安全運転講習でスピードが倍になると制動距離(ブレーキ踏んでから止まるまで)は速度の二乗に比例なんて講義があったのを覚えておられるかもしれません。スピードの出しすぎには気を付けましょう。
2.問8の解説
これも状況だけはややこしい問題ですが、結局力学的エネルギー保存則だけで解けてしまいます。問7は力学的エネルギーが摩擦で熱エネルギーに変わりますが、問8はよく読むと力学的エネルギーは損失しません。なお、回転とか考えだすとドツボにはまりますのでご注意ください。わかんなかったら飛ばしてあとで考えるのも手です。
半径aの水平な棒に糸を巻き付けて、その先端に大きさの無視できるおもりを下げて静止させる。この時の糸の長さを4πaとする。この状態で、おもりに対し向かって棒と垂直で水平方向に速さvを与えたところ、糸はたるむことなく棒に巻き付いた。このとき、ちょうど1周した瞬間のおもりの速さはいくらか。ただし、重力加速度の大きさをgとし、糸は伸び縮みせず、その質量は無視できるものとする。
余計なことがいっぱい書いてあって一瞬頭が混乱しますねぇ。要は1周回って棒に巻き取られた。ということは糸は1周分短くなった。ということはその分鉛直上方向に移動したよ。その時の速度を求めなさいという問題です。著作権上微妙なので、記事上図は省略していますが、原文では図がついていたので正直もっと解きやすかったはずです。回ってるから円の速度がどうとかつい考えてしまいがちですが、ぎりぎり回るスピードで回しても超高速で回しても結局式は一緒なので、円運動とかこの問題では考えなくていいです。あと、糸の張力による仕事ですが、実はこれ動く方向と直角の力がかかっているので、難しい言葉でいえばW=F・s で内積(cos π/2)0、簡単に言えば回転運動のごとく動きと直角方向の力は仕事してないでいいです。
では答えですが、単純に力学的エネルギー保存則から、運動エネルギーの一部がポテンシャルエネルギーに変わる、しかも途中で仕事されてない、ほかのエネルギーに変わってないなど条件がそろえばポテンシャルエネルギーは経路によらず一定、この問題は途中で仕事されてない(回ってるだけだから)、摩擦もない、とあてはまるので、棒の周が弧度法の定義から2πaになることに着目すると
K = K' + U(2πaだけ上に上がった分速さは遅くなり運動エネルギーはポテンシャルエネルギーに変わった。という式)
1/2 m v^2 = 1/2 m v'^2 + mg(2πa) (定義、代入しました)
この式について、両辺から2πmga引いてから両辺2倍してmで割ってから整理すると
v' = √(v^2 - 4πga)
が答えになります。